吸入ステロイド薬 (ICS)




    吸入ステロイド薬(Inhaled Corticosteroid;ICS)は喘息治療の中心となる薬剤で、副作用が少なく、
    すぐれた治療効果のある薬ですが、正しく吸入しないと効果があがりません。そこでその種類、使
    用量、使用方法などについて説明します。



種類
 
性状 製品名 商品名および規格
定量加圧式
噴霧器

(エアゾール)


pressurised 
meterd dose 
inhaler

(pMDI)
べクロメタゾン
beclomethasone
dipropionate
(BDP)
 キュバール 50エアゾール  1噴霧50μg
 キュバール 100エアゾール  1噴霧100μg
フルチカゾン
fluticasone propionate
(FP)
 フルタイド 50エアゾール  1噴霧50μg
 フルタイド 100エアゾール  1噴霧100μg
シクレソニド
ciclesonide
(CIC)
 オルベスコ 50μgインへラー  1噴霧50μg
 オルベスコ 100μgインへラー  1噴霧100μg
 オルベスコ 200μgインへラー  1噴霧200μg
フルチカゾン
fluticasone
propionate

サルメテロール
salmeterol

(FP/SM)

(配合剤)
 アドエア 50エアゾール  (FP/SM)
 1回 50/25μg
 アドエア 125エアゾール  (FP/SM)
 1回 125/25μg
 アドエア 250エアゾール  (FP/SM)
 1回 250/25μg
フルチカゾン
fluticasone
propionate

ホルモテロール
formoterol
(FP/FM)
(配合剤)
 フルティフォーム 50エアゾール 
      56吸入用
 (FP/SM)
 1回 50/5μg
 フルティフォーム 50エアゾール 
      120吸入用
 (FP/SM)
 1回 50/5μg
 フルティフォーム 125エアゾール 
      56吸入用
 (FP/SM)
 1回 125/5μg
 フルティフォーム 125エアゾール 
      120吸入
 (FP/SM)
 1回 125/5μg
ドライパウダー

dry powder inhaler

(DPI)
フルチカゾン
fluticasone propionate
(FP)
 フルタイド ロタディスク50  1回  50μg
 フルタイド ロタディスク100  1回 100μg
 フルタイド ロタディスク200  1回 200μg
 フルタイド ディスカス50  1回 50μg
 フルタイド ディスカス100  1回 100μg
 フルタイド ディスカス200  1回 200μg 
ブデソニド
budesonide
(BUD)
 パルミコート タービュヘイラー100
       112吸入
 1回 100μg
 パルミコート タービュヘイラー200
        56吸入
 1回 200μg 
 パルミコート タービュヘイラー200
       112吸入
 1回 200μg
モメタゾン
mometasone
furoate

(MF)
 アズマネックス ツイストヘラー100  1回 100μg
 アズマネックス ツイストヘラー200  1回 200μg
フルチカゾン
luticasone

サルメテロール

salmeterol
(FP/SM)

(配合剤)
 アドエア ディスカス100 28吸入    (FP/SM)
 1回 100/50μg
 アドエア ディスカス250 28吸入用    (FP/SM)
 1回 250/50μg
 アドエア ディスカス500 28吸入用    (FP/SM)
 1回 500/50μg
 アドエア ディスカス100 60吸入用  (FP/SM)
 1回 100/50μg
 アドエア ディスカス250 60吸入用  (FP/SM)
 1回 250/50μg
 アドエア ディスカス500 60吸入容 (FP/SM)
 1回 500/50μg
ブテソニド
udesonide

ホルモテロール

formoterol
(BUD/FM)
(配合剤)
 シムビコート タービュヘイラー30吸入   (BUD/FM)
 1回160/4.5μg
 シムビコー タービュヘイラー60吸入   (BUD/FM)
 1回160/4.5μg
フルチカゾン
フランカルボン酸
エステル

ビランテロール

(FF/VI)
(配合剤)
 レルべア 100 エリプタ14吸入用 (FF/VI)
1回100/25μg
 レルべア 100 エリプタ30吸入用 (FF/VI)
1回100/25μg
 レルベア 200 エリプタ14吸入用 (FF/VI)
1回200/25μg
 レルベア 200 エリプタ30吸入用 (FF/VI)
1回100/25μg
吸入液 ブデソニド
budesonide
(BIS)
 パルミコート吸入液0.25mg 0.25mg×2回/日
 パルミコート吸入液0.5mg 0.5mg×1回/日
※キュバールの海外商品名=Qval
フルタイドの海外商品名=FlixotideまたはFlovent
※パルミコートの海外商品名=Pulmicort
※アドエアの海外商品名=SeretideまたはAdovair
※オルベスコの海外商品名=Albesco
※アズマネックスの海外商品名=Asthmanex
※シムビコートの海外商品名=Symbicort

※フルティフォームの海外商品名=Flutiform
※レルベアの海外商品名=Relvar

商品名 キュバール オルベスコ フルタイド
エアゾール
実物写真
一般名
(略号)
ベクロメタゾン
(BDP-HFA)
シクレソニド
(CIC-HFA)
フルチカゾン
(FP-HFA)
規格 50、100 50、100、200 50、100
性状 pMDI
(超微粒子)
pMDI
(超微粒子)
pMDI
発売年 2002年 2007年 2003年
発売メーカー 大日本住友
MSD
帝人ファーマ グラクソ・
スミスライン
商品名 フルタイド
ロタディスク
フルタイド
ディスカス
パルミコート
実物写真
一般名
(略号)
フルチカゾン
(FP-DH)
フルチカゾン
(FP-DK)
ブデソニド
(BUD)
規格 50、100、200 50、100、200 100、200
性状 ドライパウダー ドライパウダー ドライパウダー
発売年 1998年 2002年 2002年
発売メーカー グラクソ・
スミスライン
グラクソ・
スミスライン
アストラゼネカ
商品名 アズマネックス
アドエア
ディスカス
アドエア
エアゾール
実物写真
一般名
(略号)
モメタゾン
(MF)
フルチカゾン
+サルメテロール
(FP/SM-DK)
フルチカゾン
+サルメテロール
(FP/SM-DK)
規格 100、200 100、250、500 50、125、250
性状 ドライパウダー ドライパウダー
(配合剤)
pMDI
(配合剤)
発売年 2010年 2007年 2009年
発売メーカー MSD グラクソ・
スミスライン
グラクソ・
スミスライン
商品名 シムビコート レルべア
エリブタ
フルティフォーム
実物写真
一般名
(略号)
ブデソニド
+ホルモテロール

(BUD/FM)
フルチカゾンフランカルボン酸エステル
+ビランテロール
(FF/VI)
フルチカゾン
+ホルモテロール

(FP/FM)
規格 30吸入、60吸入 100、200 50、125
性状 ドライパウダー
(配合剤)
ドライパウダー
(配合剤)
pMDI
(配合剤)
発売年 2010年 2013年 2013年
発売メーカー アストラゼネカ
アステラス製薬
グラクソ・
スミスライン
杏林製薬
商品名 パルミコート
吸入液
実物写真
一般名
(略号)
ブデソニド吸入液
(BIS)
規格 0.25、0.5
性状 吸入液
発売年 2006年
発売メーカー アストラゼネカ

   
商品名 成人 小児
保険適応

(添付文書より)
 フルタイド 800μg/日まで 200μg/日まで
 キュバール 800μg/日まで 200μg/日まで
 オルベスコ 800μg/日まで 200μg/日まで
 アズマネックス 800μg/日まで 適応なし
 パルミコート 1,600μg/日まで 800μg/日まで
 パルミコート吸入液 2.0mg/日まで 1.0mg/日まで
 アドエア 1,000μg/日まで 200μg/日まで
 シムビコート 8吸入/日まで 適応なし
 レルべア 1吸入/日まで 適応なし
 フルティフォーム 8吸入/日まで 適応なし

使用できる回数  キュバール 50、100
1本 100回 
 オルベスコ 50、100インへラー 1本 112回 
 オルベスコ 200インへラー 1本 56回 
 フルタイドエアゾール 50 1本 120回 
 フルタイドエアゾール 100 1本  60回 
 フルタイドロタディスク 50、100、200 1枚   4回 
 フルタイドディスカス 50、100、200 1個  60回 
 パルミコート 100 ( 11.2mg) 1本 112回 
 パルミコート 200 ( 11.2mg) 1本  56回 
 パルミコート 200 ( 22.4mg) 1本 112回 
 パルミコート吸入液 (0.25mg) 1本 1回 
 パルミコート吸入液 (0.5mg) 1本 1回 
 アズマネックス 100 1本 60回 
 アズマネックス 200 1本 60回 
 アドエア ディスカス 100、250、500 (28) 1個  28回 
 アドエア ディスカス 100、250、500 (60) 1個  60回 
 アドエア エアゾール 50、125、250 1本 120回 
 シムビコート (30吸入) 1本 30回 
 シムビコート (60吸入) 1本 60回 
 レルべア 100、200(14吸入) 1個 14回 
 レルべア 100、200(30吸入) 1個 30回 
 フルティフォーム50、125(56吸入) 1本 56回 
 フルティフォーム50、125(120吸入) 1本 120回 


最近はフルタイド、パルミコート、アズマネックス、アドエア(配合剤)、シムビコート(配合剤)、レルベア(配合剤)などのドライパウダー製剤が主流になりつつあります。一方、エアゾール製剤で超微粒子のキュバール、オルベスコなどの末梢気道炎症改善効果が着目され、期待がもたれています。配合剤のエアゾール製剤のフルティフォームも末梢気改善効果が見られるようです。
噴射速度の速いフルタイドエアゾール、アドエアエアゾールはスペーサー(エアロチャンバープラス、オプチヘラー、ボアテックス)を使って吸入するのが原則だと考えますが、噴射速度がマイルドなキュバール、オルベスコ、フルティフォームはそのまま吸入(オープンマウスまたはクローズドマウス)しますが、必要に応じてスペーサーを使って吸入します。
フルタイドロタディスクはディスクヘラーという吸入器具に薬(ディスク:1枚4回分)を装着して吸入しますが、フルタイドディスカスは薬が60回分内臓されているディスカスという吸入器具で吸入します。
パルミコート、シムビコートにはタービュヘイラーという優れた吸入器具が内蔵されています。
アズマネックスは非常に操作が簡単なツイストヘラーが採用されています。
パルミコート吸入液はネブライザーを使用して吸入します。
エアゾール製剤は地球の温暖化で問題となっているHFAフロンが使われていることもあり、世界的にはフロンが使われていないドライパウダー製剤が吸入薬の主流になりつつあるようです。しかし、エアゾール製剤でl粒子の小さいキュバール、オルベスコ、フルティフォームには末梢気道炎症の改善効果がありますし、エアゾール製剤は吸う力の弱い患者さんでも吸うことができますので、エアゾール製剤も捨てがたい利便性があります。
なお、エアゾール製剤は、かつてオゾン層を破壊するということで問題になったCFCフロンが使われていましたが、現在はすべてのエアゾール製剤でHFAフロンが使われています。
キュバール、オルベスコ、フルティフォームは代替フロン(HFA-134a)が使われ、無水エタノールが添加剤として含まれています。フルタイドエアゾールも代替フロン(HFA-134a)が使われていますが、無水エタノールは含まれていません。
また、ドライパウダーのフルタイドロタディスク、フルタイドディスカス、アドエアディスカス、アズマネックス、シンビコートには
乳糖が添加剤として使われていますが(アズマネックス、シムビコートに含まれる乳糖の量は微量でフルタイドロタディスク、フルタイドディスカ、アドエアディスカスに比較して少ない)、パルミコートには添加剤が含まれていません。
アドエアフルタイドとセレベント(長時間作用性吸入β2刺激薬:単剤としての発売あり)の配合剤で、わが国ではアドエアディスカスが2007年6月に発売されました。アドエアのエアゾール製剤は、アドエア50エアゾールが2009年4月に発売され、2010年4月23日にはアドエアエアゾールの125、250が発売されました。
また、
パルミコートとホルモテロール(長時間作用性吸入β2刺激薬:商品名はオーキシスで、単剤としてCOPDに適応症があります)の配合剤でドライパウダー製剤のシムビコートがが2010年1月13日にが発売されました。
そして2013年にはフルチカゾン/ホルモテロールの配合剤
フルティフォームとフルチカゾンフランカルポン酸エステル/新しい長時間作用性吸入β2刺激薬ビランテロール(ドライパウダー:1日1回)kの配合剤レルベアが発売されました。



効果の発現時期

吸入ステロイド薬はすぐに効果が現れる薬ではありません。通常、使用を開始してから3〜7日後から効果があらわれはじめ、1ヶ月でピークに達するといわれています。
もちろん、吸入ステロイド薬は予防する薬ですから発作のときに使用しても効果がありません。

なお、配合剤は長時間作用性吸入β2刺激薬が含まれているために早期に治療効果が発現しますが、吸入ステロイド薬自体の効果は上に示したようになると思います。ただし、吸入ステロイド薬の種類によって効果発現までの時間が違うようです。



使用量

吸入ステロイド薬の使用量は患者さんの症状や重症度によって異なりますし、薬の種類によっても異なります。通常、治療ステップ1では低用量、治療ステップ2では低〜中用量、治療ステップ3では中〜高用量、治療ステップ4では高用量を使います。
フルタイド、キュバール、オルベスコ、フルタイド、アズマネックスの使用量はすべて同量で、パルミコートはその倍量となっています。ただし、レルベアは用量が違います。
JGL2015(喘息予防ガイドライン2015)では、使用量について国際ガイドラインを参考にして保険で定められている最大使用量を高用量とし治療ステップ3〜4で使用、その半分の量を中用量として治療ステップ2〜3で使用、さらにその半分を低用量として治療ステップ1〜2で使用するというになっています。
シムビコートでは低用量を2吸入(1吸入×2)/日、高用量を8吸入(4吸入×2)/日とし、4吸入(2吸入×2)/日を中間用量とされています。それぞれ、含まれるパルミコートの量は従来のパルミコートとして低用量は200μg×2、中間用量は400μg×2、高用量は800μg×2ということになります。


吸入ステロイド薬の使用量 (1日使用量:成人)

                                            (1日使用量::単位μg
使用量 キュバール
オルベスコ
フルタイド
アズマ
  ネックス
パルミ
コート
アドエア
(配合剤)
シムビ
コート
(配合剤)
レルべア
(配合剤)
フルティ
フォーム
(配合剤)
治療ステップ
1〜2

低用量
100〜200 200〜400 200 2吸入 100×1吸入 200
治療ステップ
3
中用量
200〜400 400〜800 500 4吸入 100×1吸入
or
200×1吸入
500
治療ステップ
4
高用量
400〜800 800〜1,600 1,000 8吸入 200×1吸入 1,000

使用量は経過によって増やしたり、減らしたりしますが、最初に多目に使用して、経過によってだんだん減らしていく方法(ステップダウン)が最も効果的とされています。
その場合、症状やピークフロー値を参考にしながら、少なくとも3ヶ月以上の安定を確かめて減らすのが原則です。したがって、
患者さんが自分の判断で減らしたりするのは好ましいことではありません
もちろん、コントロールが不十分な場合はステップアップします。


参考のために、GINAおよびJGL2015、JPGL2012に記載されている使用量を一覧します

JGL2015(日本アレルギー学会) 
JPGL2012(日本小児アレルギー学会)  一部追加 
(1日使用量::単位μg、シムビコートは吸入回数)
                                    
成人
小児別
薬剤名
治療ステップ
1〜2
軽症持続型
(低用量)
治療ステップ
3

中等症持続型

(中用量)
治療ステップ
4
重症持続型
(高用量)
成人  キュバール 100〜200 200〜400 400〜800
 フルタイド 100〜200 200〜400 400〜800
 オルベスコ 100〜200 200〜400 400〜800
 パルミコート 200〜400 400〜800 800〜1,600
 アズマネックス 100〜200 200〜400 400〜800
 アドエア 200 500 1,000
 シムビコート 2吸入 4吸入 8吸入
 レルべア 100 1吸入 100 or 200 1吸入 200 1吸入
 フルティフォーム 200 500 1,000
小児  キュバール 〜100 〜200 〜400*
 オルベスコ 〜100 〜200 〜400*
 フルタイド 〜100 〜200 〜400*
 パルミコート 〜200 〜400 〜800*
 アドエア 100 200

*小児おける高用量は
キュバール、オルベスコ、フルタイドでは〜400μg/日となっていますが、
小児においてキュバールおよびフルタイドの保険で承認されている最大用量は200μg/日です。
オルベスコは添付文書では200μg/日までと記載されていますが、最大用量についてはとくに記載がありません。
一方、パルミコートは最大800μg/日まで保険適応となっています。






吸入ステロイド薬はどれが良いのか?


吸入ステロイド薬はそれぞれ薬剤や吸入器具(ディバイス)に特性がありますので、それらの特性を生かした使い分けが重要だと思います。
以下に(1)エアゾール製剤、(2)ドライパウダー製剤、(3)ICS/LABA配合剤に分けて、それぞれの薬剤の特性を中心に吸入ステロイド薬の比較一覧表を記載します。

       吸入ステロイド薬の比較一覧表

   (1) エアゾール製剤 (pMDI) <ICS/LABA配合剤を除く>

 一 般 名 べクロメタゾン
(BDP)
シクレソニド
(CIC)
フルチカゾン
(FP)
 商 品 名 キュバール オルベスコ
フルタイド
エアゾール
 実物写真
 適  応 成人(小児 成人 成人(小児
 最大使用量
  (小児)
800μg/日
(200μg/日)
800μg/日 800μg/日
(200μg/日)
 発売年 2002年 2007年 2003年
 吸入器具 インへラー インへラー インへラー
 カウンター なし なし なし
 フロンガス HFA HFA HFA
 添加剤 エタノール エタノール (−)
 平均粒子径 1.1μm 1.1μm 3.1μm
 抗炎症作用
 肺沈着率 40〜55% 52% 29%
 肝臓での
 不活性化率
80% 99% 99%
 吸入臭・味 アルコール臭 アルコール臭 ほぼ無臭
 治療効果
 全身への影響
 吸う力が弱い
 患者への対応
 簡 便 性 ×
× ● (×
 残量の確認 × × ×
 携 帯 性 × × ×
 臭い・味 × ×
 吸入感
 粉っぽさ
 末梢気道炎症 △〜×
 局所的副作用
       ●:大変優れている ○:優れている △:やや劣る ×:劣る (使用経験から)
         
           宮川武彦:medicina 52,1984-1988,2015に追加

   (2) ドライパウダー製剤 <ICS/LABA配合剤を除く>

 一 般 名 フルチカゾン
(FP)
フルチカゾン
(FP)
ブデソニド
(BUD)
モメタゾン
(MF)
 商 品 名 フルタイド
ロタディスク
フルタイド
ディスカス
パルミコート アズマネックス
 実物写真
 適  応 成人(小児) 成人(小児) 成人 成人
 最大使用量
  (小児)
800μg/日
(200μg/日)
800μg/日
(200μg/日)
1,600μg/日
800μg/日
 発売年 1998年 2002年 2002年 2009年
 吸入器具 ロタディスク ディスカス タービュヘイラー ツイストヘラー
 カウンター なし あり なし あり
 添加剤 乳糖(多い) 乳糖(多い) (−) 乳糖(少ない)
 平均粒子径 5.2μm(3.3) 5.2μm(3.2 2.6μm 2.0μm
 抗炎症作用
 肺沈着率 11〜16% 15〜17% 30% 40%
 肝臓での
 不活性化率
99% 99% 90% 99%
 吸入臭・味 無臭・甘い 無臭・甘い 無臭
後で苦い
無臭
 治療効果
 全身への影響
 吸う力が弱い
 患者への対応
× × ×
 簡 便 性 ●〜○
 残量の確認
 携 帯 性 ×
 臭い・味 〜○
 吸入感 × ×
 粉っぽさ ×
 末梢気道炎症 × × ×
 局所的副作用 △〜×
       ●:大変優れている ○:優れている △:やや劣る ×:劣る (使用経験から)

                     宮川武彦:medicina 52,1984-1988,2015に追加


   (3) ICS/LABA配合剤

 一 般 名 フルチカゾン

サルメテロール
(FP/SM-DK)
ブデソニド

ホルモテロール
(BUD/FM)
フルチカゾン

サルメテロール
(FP/SM-HFA)
フルチカゾンフランカルボン酸エステル

ビランテロール
(FF/VI)
フルチカゾン

ホルモテロール

(FP/FM-HFA)
 商 品 名 アドエア
ディスカス
シムビコート
アドエア
エアゾール
レルペア フルティ
フォーム
 実物写真
 適  応 成人(小児 成人 成人(小児 成人 成人
 最大使用量
  (小児)
1,000μg/日
(200μg/日)
8吸入/日 1,000μg/日
(200μg/日)
200μg/日 1,000μg/日
 発売年 2007年 2010年 2009年 2013年 2013年
 吸入器具 ディスカス タービュヘイラー インへラー エリプタ インヘラ―
 カウンター あり あり あり あり あり
 添加剤 乳糖(多い) 乳糖(少ない) HFAフロン
乳糖(多い) HFAフロン
 平均粒子径 FP 4.4μm
SM 4.4μm
BUD 2.4μm
FM   2.5μm
3.1μm FF 4.0μm
VI 2.2μm
2.1〜4.7μm
 肺内送達率 15〜17% 40% 30%
 抗炎症作用
 効果持続時間 12時間 12時間 12時間 24時間 12時間
 効果発現時間 遅延(15分) 迅速(1分) やや遅延
(5分?)
遅延(15分) 迅速(1分)
 局所的副作用 やや多い やや少ない 少ない やや多い? 少ない
 吸入臭・味 無臭・甘い 無臭・無味 ほぼ無臭 無臭・甘い アルコール臭
 治療効果
 全身への影響
 簡 便 性 ●〜 ○(× ×
 操作性 ×
 残量の確認
 臭い・味 ●〜○ △〜×
 携 帯 性 ○(×) × (×)
 吸入感 ×
 迅速性 × ×
 発作への対応 × × × ×
 末梢気道炎症 × △〜× × 〇〜
 吸う力が弱い
 患者への対応
× × ×
 末梢気道炎症 × △〜× × 〇〜
 局所的副作用 〇〜△
 1剤用量調節 × × × 〇〜
       ●:大変優れている ○:優れている △:やや劣る ×:劣る (使用経験から)

              宮川武彦:medicina 52,1984-1988,2015に追加、一部変更

ュバール、オルベスコ、フルタイドエアゾール、アドエアエアゾール、フルティフォームのエアゾール製剤における簡便性は、オープンマウス法、クローズドマウス法なら○、スペーサー使用なら×ということになります。携帯性もスペーサーを使用しなければ○、使用すれば×ということです。
キュバール、オルべスコ、フルティフォームはあまりスペーサーを使うことはありませんが、フルタイドエアゾール、アドエアエアゾールは噴射速度が速いのでスペーサーが必要だと思います。
フルタイドロタディスクおよびディスカスの粒子径は、各種文献から5.2μmと記載していましたが、ドライパウダーの基準となる吸気速度(60/min)で吸入した場合にはロタディスクは3.3μm、ディスカスは3.2μmとなるようなので( )で示しました。(GSK社内調査)


平均粒子径、抗炎症作用、肺沈着率、不活性化率は文献を参考に記載しました。

治療効果以下の部分は私自身の使用経験と文献、情報などを参考にして作成したものであり、一般的に認められている評価ということではありません。


フルタイドディスカス、アドエアディスカスとパルミコート、シムビコートではそれほど差がないようですが、あえていえば、器具の大きさ(パルミコート、シムビコートはディスカスより小さい)や携帯性はややパルミコートです。しかし、器具の扱いやすさはフルタイドディスカス、アドエアディスカス、レルベアだと思います。吸入口(マウスピース)は、フルタイドディスカス、アドエアディスカス、レルベアではディクヘラーに比べてかなり変わりましたので一部に違和感を覚え人があるようですが、吸入口がディスクへラーとそれほど変わらないパルミコート、シムビコートでは違和感を覚える人は少ないようです。ただし、これは慣れの問題ではないかと思います。キュバール、オルベスコ、フルティフォームも器具の大きさが適当で、器具も扱いやすく、携帯にも便利です。(ただし、スペーサーを使用する場合、器具の扱いやすさも携帯性も便利とはいえません)
薬剤の終了が非常にわかりやすいのはカウンターがついていて、残りの回数を数字で示すフルタイドディスカス、アドエアディスカス、アドエアエアゾール、アズマネックス、フルティフォーム、レルベアです。咳、喉への刺激、口内乾燥、嗄声などが少ないのはキュバール、フルタイドエアゾール、オルベスコ、フルティフォームのようです。私の経験でもフルタイドエアゾール、キュバール、オルベスコ、フルティフォームは非常に局所的副作用が少ないと考えています。
治療効果についてはどの吸入ステロイド薬でもそれほど変化はないと思います。現在までの私自身の使用経験では、どの薬剤でも安定した治療効果が得られると思っていますが、中には、吸入ステロイド薬を変更したことで症状が改善した例もあり、やはり、個人個人にあったものを選択することが大切だと思います。

全身への影響については、通常使用量ならすべて◎と考えています。
なお、キュバール、オルベスコは粒子が小さく末梢気道にまで薬剤が到達するという点で注目が集まっています。


以下に、DPI製剤()とpMDI製剤()の長所と短所をまとめてみました。




 各吸入ステロイド薬の特徴

吸入ステロイド薬(ICS)にはキュバール(ベクロメタゾン)、フルタイド(フルチカゾン)、パルミコート(ブデソニド)、オルベスコ(シクレソニド)、アズマネックス(モメタゾン)の5種類があり、フルタイドにはディスカス、ロタディスクのドライパウダー製剤(DPI)とエアゾール製剤(pMDI)がある。そして、長時間作用性吸入β
2刺激薬(LABA)との配合剤にはアドエア、シムビコート、レルベアのドライパウダー製剤3剤とアドエアエアゾール、フルティフォームのエアゾール製剤2剤があります。
また、パルミコートにはネブライザーで使用する吸入液があります。

配合剤、吸入液を含めますと、現在13種類があるわけですが、以下、簡単にそれぞれの吸入ステロイド薬の特徴をまとめました。



(1) キュバール(ベクロメタゾン:BDP-HFA)
キュバールはHFAフロンが使われているエアゾール製剤で、大きな特徴はエタノールが添加されていて完全溶解系になっていることと、エアゾルの粒子が非常に小さいことです。そのため、他の吸入ステロイド薬よりも吸入した薬が末梢気道まで到達し(肺沈着率50%)、末梢気道への効果が期待されます。ただし、抗炎症作用はフルタイドより弱くなっています。なお、エアゾール製剤では、一般に嗄声などの局所的副作用はドライパウダー製剤より非常に少ないと思います。(個人差があります)
キュバールはドライパウダーが十分吸えない人(吸気速度が低下している低い人:高齢者や幼小児など)でも吸入が可能です。
コールドフレオン現象
キュバールをオープンマウス法またはクローズドマウス法で直接吸入すると、患者さんによって、まれに、
吸入時に咳込んだり、むせたりすることがあります。これは、フロンガスによるコールドフレオン現象(cold Freon effect)によって引き起こされると考えられます。また、添加されている無水エタノールによる刺激による可能性も否定できません。
フロンガスを使用したエアゾール製剤では、スペーサーを使わず直接吸入すると、薬剤の強い噴射力とやや冷たい薬剤が噴射されるため咽喉頭に過度の刺激を与え、咳き込む、むせるなどのコールドフレオン現象が起こることが指摘されていますが、キュバールはややゆっくり噴射されるため、従来のエアゾール製剤に比較してコールドフレオン現象は非常に少ないとされています。
こういう場合は、デュオペーサーを使用するか、ドライパウダー製剤に変更することで対応できると思います。

(2)

オルベスコ(シクレソニド:CIC-HFA)

オルベスコはキュバールと同様にHFAフロンが使われているエアゾール製剤で、大きな特徴はエタノールが添加されていて完全溶解系になっていることと、エアゾルの粒子が非常に小さいことです。そのため、キュバールのように吸入した薬が末梢気道まで到達し(肺沈着率52%)、末梢気道への効果が期待されます。また、1日1回投与(ただし、800μgは1日2回)もオルベスコの大きな特徴です。
なお、エアゾル製剤では、一般に嗄声などの局所的副作用はドライパウダー製剤より非常に少ないと思います(個人差があります)。オルベスコは肺で活性化される局所活性化型の吸入ステロイド薬であるため、口腔カンジダ症、嗄声などの局所的副作用は少ないようです。
オルベスコはドライパウダーが十分吸えない人(吸気速度が低下している低い人:高齢者や幼小児など)でも吸入が可能です。

なお、オルベスコとキュバールのデバイス(吸入器具)は全く同じ米国スリーエム社製のものです。

(3)

フルタイドエアゾール(HFA-フルチカゾン:FP-HFA)

フルタイドのエアゾール製剤で、HFAフロンが使用されています。フルタイドディスカス、フルタイドロタディスクのドライパウダー製剤に比較すると粒子径はやや小さく、肺沈着率(29%)も高くなっています。エアゾール製剤ですから嗄声などの局所的副作用はドライパウダー製剤よりかなり少ないと思います。
フルタイドエアーゾールはキュバール同様、ドライパウダーが十分吸えない人(吸気速度が低下している低い人:高齢者や幼小児など)でも吸入が可能です。(個人差があります)
フルタイドエアゾールは残量がわかりにくいという欠点があります。

(4)

アドエアエアゾール(合剤:FP/SM-HFA)
吸入ステロイド薬フルタイドと長時間作用性β2刺激薬セレベントの配合剤がエアゾール製剤になったもので、吸入器具や粒子径はフルタイドエアゾールとほとんど同じになっていますが、アドエアエアゾールにはカウンターが付いていて、終了が良くわかるようになっています。カウンターが付いたエアゾール製剤はアドエアーエアゾールが初めてです。
アドエアの治療効果などについてはについては、吸入ステロイド薬配合剤の項で詳しく説明していますのでご参照下さい。

(5)

フルタイドロタディスク(フルチカゾン:FP-DH)

フルタイドディスカスおよびロタディスクはドライパウダー製剤で、乳糖が添加剤されています。粒子はやや大きく、肺沈着率(ディスカ15〜17%、ロタディスク11〜16%)は低いですが、吸入ステロイド薬の中では最も強い抗炎症作用があります。また、肝臓での初回通過による不活性化率が高いのもフルタイドの特徴です。
フルタイドディスカスおよびロタディスクは吸気速度が低下している人(高齢者や幼小児など)では、吸入がうまく出来ない可能性があります。(個人差があります)
(6) フルタイドディスカス(フルチカゾン:FP-DK)
フルタイドディスカスおよびロタディスクはドライパウダー製剤で、乳糖が添加剤されています。粒子はやや大きく、肺沈着率(ディスカ15〜17%、ロタディスク11〜16%)は低いですが、吸入ステロイド薬の中では最も強い抗炎症作用があります。また、肝臓での初回通過による不活性化率が高いのもフルタイドの特徴です。
フルタイドディスカスおよびロタディスクは吸気速度が低下している人(高齢者や幼小児など)では、吸入がうまく出来ない可能性があります。(個人差があります)フルタイドディスカスは操作が簡単で、残量が知ることができるカウンターがついています。

(7)

パルミコート(ブデソニド:BUD)

パルミコートはドライパウダー製剤でタービュヘイラーという優れた吸入器具が内蔵されていて、添加剤を含まないのが特徴です。抗炎症作用はそれほど強力ではありませんが、粒子径はやや小さく、肺到達率(30%)もかなり高いとされています。
パルミコートは添加物が含まれていませんので「吸った感じがしない」、「吸えているかどうかわからない」という欠点がありますが、フルタイドディスカスやロタディスクに比較して咽喉頭部への刺激が少なく、嗄声などの局所的副作用は少ないと思います。

パルミコートは吸気速度が低下している人(高齢者や幼小児など)では、吸入がうまく出来ない可能性があります。(個人差があります)

(8)

アズマネックス(モメタゾン:MF)

アズマネックスはツイストヘラーという非常に優れた吸入器具になっており、キャップを外して吸うだけと大変簡単で便利になっております。平均粒子径は2.0μmとドライパウダー製剤では最も小さく、肺沈着率も40%と高いのが特徴です。粒子径が小さいため中枢気道のみならず末梢気道まで薬剤が到達すると考えられ、期待がもたれています。
フルタイドディスカスやロタディスクに比較して咽喉頭部への刺激が少なく、嗄声などの局所的副作用は少ないようです。アズマネックスは吸気速度が低下している患者さんで吸入可能とされていますが、今後、検討したいと思っています。

(9)

アドエアディスカス(配合剤:FP/SM-DK)

吸入ステロイド薬フルタイドと長時間作用性吸入β2刺激薬セレベントの配合剤がドライパウダー製剤になったもので、吸入器具は同じで、平均粒子径(4.4μm)はフルタイドディスカス(4.4μm)よりやや小さくなっています。
アドエアの治療効果などについてはについては、吸入ステロイド薬配合剤の項で詳しく説明していますのでご参照下さい。

(10)

シムビコート(配合剤:BUD/FM)

.吸入ステロイド薬パルミコートと長時間作用性吸入β2刺激薬ホルモテロールの配合剤がドライパウダー製剤になったもので、吸入器具はパルミコートとほぼ同じで、平均粒子径はパルミコートが2.4μm、ホルモテロール2.5μmといわれています。シムビコートの大きな特徴は長時間作用性吸入β2刺激薬ホルモテロールの効果出現が速く、発作時にも対応できるところです。また平均粒子径が小さく中枢気道のみならず末梢気道にも効果があるとされています。
シムビコートの治療効果などについてはについては、吸入ステロイド薬配合剤の項で詳しく説明していますのでご参照下さい。

(11)

パルミコート吸入液(ブデソ二ド吸入液:BIS)
パルミコート吸入液は吸入ステロイド薬のブデソニドを吸入液にしたものでネブライザーを使って吸入します。ドライパウダー製剤やエアゾール製剤が使用できない5歳以下の小児や高齢者などで使われます。


(12)

フルティフォーム(配合剤:FP/FM)
吸入ステロイド薬フルタイドと長時間作用性吸入β2刺激薬ホルモテロールの配合剤がエアゾール製剤になったもので、吸入に際しては、ゆっくり深く吸うことと息止めをするのがポイントとなります。エアゾールの噴射速度はそれほど早くはないので、ほとんどがそのままクローズドマウスで吸入できると思いますが、上手に同調できない人ではスペーサーを使用する方が良いと思います。(スペーサーを使用しなければ吸入手技はとても簡単になります)
中枢ら末梢まで作用して、効果はかなりいいようであるというのが私の印象です。

(13)

レルベア(配合剤:FF/VI)
吸入ステロイド薬フルチカゾンフランカルボン酸エステルと長時間作用性吸入β2刺激薬ビランテロールを配合したドライパウダー製剤で、1日1回で良い便利さがあります。操作はキャップを開いて吸うだけで非常に簡単です。患者さんの症状によって100μgと200μgを使い分けますが、簡便で優れた治療効果があるという印象を受けています。
アズマネックス、パルミコート、シムビコートは、吸入した感じが非常になく、頼りない感じがしますが、薬は十分吸入されていますので心配はありません
とくに、パルミコートは添加剤が入っていないために吸入する薬の量がわずかで、ほとんど吸った感じがしませんが、薬は十分吸入されていますので心配はありません。
また、フルタイドディスカスも添加剤として含まれている乳糖の量がフルイドロタディスクのときの約半分になりましたので、フルイドロタディスクを使っていた人には少し頼りない感じがしますが、薬は十分吸入されていますので心配はありません。

アズマネックス、パルミコート、シムビコートは、今までに他の吸入薬を使用した経験のある人にとっては、物足りない感じがあるかも知れませんが、吸入感が少ないことはむしろ改良されていると考えた方が良いと思います。

吸気速度が著しく低下している人ではドライパウダー製剤がうまく吸えない可能性があります。そうした患者さんは乳幼児、高齢者に多いですが、一般の方でもときに見られることがあります。私のところではインチェックという器具で吸気速度を測定するか、トレーナーを使って吸入できるかどうかをチェックしていますが、それらの器具を使わない場合の目安は「ソバをすすれるかどうか」です。「すすれる」人はまずうまく吸えると思います。

最終的に、フルタイド、パルミコート、アズマネックス、キュバール、オルベスコ、アドエア、シンビコート、フルティフォーム、レルベアのいずれを使用するかは、患者さんの好みや先生の使い分けによって決まることになります。
なお、嗄声などの局所的副作用はエアゾール製剤(フルタイドエアゾール、キュバール、オルベスコ、アドエアエアゾール、フルティフォーム)が少ないようです。

当院ではキュバール、オルベスコもしばしば使っています。効果は、フルタイド、パルミコート、アズマネックスとほとんど同じでと考えられますが、フルタイド、パルミコートからキュバールやオルベスコ更して症状が著しく改善する患者さんも多くあります。キュバール、オルベスコ局所的副作用はかなり少ない印象です。ただ、無水エタノールが含まれているためアルコール臭があるのがやや難点かも知れません。



吸入ステロイド薬の選択


当院では吸入ステロイド薬を選択するにあたっては、
(1) まず最初にICSにするかICS/LABA配合剤にするを決めます。これは治療ステップ(重症度)によって決めますが、ステップ1〜2ではICS、ステップ2〜4ではICS/LABA配合剤を選択します。ステップ2ではICSLABA配合剤を使うことがおおくなっています。
(2) 次いでドライパウダー製剤(DPI)にするかエアゾール製剤(pMDI)にするかを決めます。吸気流速によって決めています。すなわち、吸気流速が正常であれば原則としてDPIを、吸気流速が低下していればpMDIを選択します。
(3) その上で、下に示したような項目を考慮して、選択しています。
・ 簡便性
・ 操作性
・ 残量のわかりやすさ
・ 抗炎症作用
・ 粒子径
・ 肺沈着率
・ 末梢気道炎症
・ 臭い・味
・ 全身への影響
・ 局所的副作用
・ 年齢・合併症
・ 妊娠・授乳
・ 服薬アドヒアランス
・ 価格
・ 生活状態・健康状態
・ 服薬アドヒアランス
選択したら用量を設定して投与します。
(4) それででコントロール不良や局所的副作用があれば、ICSあるいはICS/LABA配合剤の変更ないし増量を考慮しますが、増量するより変更してみる方が得策だと私は考えています。

なお、局所的副作用があればpMDIに変更、末梢気道炎症が考慮される場合は粒子を小さいものを使用するようにしています。





使用方法

吸入ステロイド薬を使用するにあたってのポイントは以下のとおりです。

(1)  適切な吸入器具を使用する 吸入ステロメイド薬は何種類もありますが、簡便性、吸入手技、治療効果、局所的服作用などを考慮して、もっとも自分に合ったものを使用することが大切です。
(2)  適切な用量を使用する 適切な用量を使用しないと効果があがりません。指示された量をきちんと吸入することが大切です。自分勝手な判断で減らしたりすることはよくありません。
(3)  正しく吸入する 正しく吸入しないと効果があがりません。
正しく吸入してください!
(4)  毎日定期的に吸入する 指示された量を毎日規則的に、しかも継続して使用することが大切です。「良くなったから」といって中断したり中止すると、再発したり症状が不安定になります。喘息を安定させるためには良くなっても続けることが大変重要です。



吸入ステロイド薬の使用方法

吸入薬は正しく使用しないと効果が上がりませんので、正しく吸入して下さい。
薬によって吸入方法が違いますので、以下に、簡単に吸入方法を説明します。なお、使用にあたっては、発売元各社が作成している使用説明書などの写真、イラストを使用させていただきました。とても大切なことですから、わからない場合は受診している医療機関でよく説明を受けてください。

以下の順で各吸入ステロイド薬の使用方法を紹介します。
1) フルタイドエアゾール、アドエアエアゾール
2) キュバール
3) オルベスコ
4) フルタイドロタディスク
5) フルタイドディスカス、アドエアディスカス
6) パルミコート、シムビコート
7) アズマネックス
8) フルティフォーム
9) レルベア



       1) フルタイド エアゾールの吸入方法
           アドエアエアーゾールの吸入方法
 左から フルタイドエアゾール100
      フルタイドエアゾール50
 左から  アドエア 50エアゾール
       アドエア125エアゾール
       アドエア250エアゾール

●フルタイドエアゾールを初めて使用するときは試し噴射を2回行い、噴霧を確
  認します。
アドエアエアゾールを初めて使用するときは、まずよく振ります。それからボン
  ベを押しますが、カウンターが"124"になっていますので
"120"になるまでボン
  ベを4回空噴霧してから使用します。



フルタイドエアゾール、アドエアエアゾールはいずれも「シュッ」と噴射速度が速いの、スペーサーを使って吸入した方が良いと思います。なお、日本アレルギー学会では洗剤でコーティングされた
エアロチャンバープラス、オプチヘラー、ボアテックスを推奨しており(下記に記載)、発売元の久ラクソ・スミスクライン社もエアロチャンバープラスを推奨しています。したがって、従来からあったボルマチックソフトは配布中止となりました。

●ボンベは絶対濡らさないようにします。(噴射口がつまる原因となります)
●噴射口のつまりを避けるため、少なくとも週1回以上アダプターの吸入口の外
  側と内側を乾いた布やティッシュペーパーでよく 拭き、清潔に保管します。
●アドエアエアゾールで内側のボンベはアダプターからはずしてはいけません。
●アドエアエアゾールは落とすとカウンターの数字が変動する場合があるので、
  取り扱いには十分気をつけます。


 エアロチャンバー・プラスによる吸入


アドエアエアゾールではボンベをアダプターから外してはいけません!


                      (資料提供:グラクソ・スミスクライン社)

エアロチャンバー・プラスに関する問い合わせ先

製造発売元 株式会社アムコTEL03-3265-4261

フルタイドエアゾール、アドエアエアゾールは治療効果、局所的副作用の面からエアロチャンバープラスなどのスペーサーを使うべきと考えます。私の経験では、スペーサーがなかったころはそのまま吸入(オープンマウス法、クローズドマウス法)していましたが、スペーサーで吸入する場合に比較して、治療効果は落ち、局所の副作用も多くありました。そのため当院では、フルタイドエアゾール、アドエアエアゾールを使用するすべての患者さんに必ずスペーサーで吸入するように指導しています。
とにかく、スペーサーを使って、ゆっくり深く吸って、息止めするというのが最大のポイントです。

エアロチャンバー・プラスでは吸入が早すぎると「プ―」と警報音がしますので、「プー」といわない程度にゆっくり吸入します。



2) キュバールの吸入方法
 キュバール50、100

キュバールにはオープンマウス法、クローズドマウス法、スペーサーを使う方法などの使用法があります。

●初めて使用するときは試し噴射を2回行い、噴霧を確認します。

デュオペーサーを使う方法




テュオペーサーの丸い開口部をアダプターに取り付ける。 苦しくならない程度に息を十分吐き出す。 デュオペーサーを口にくわえ、クチビルを閉じる




容器の底を1回押して、デュオペーサー内に薬を噴霧する。
ゆっくり深く吸入する
デュオペーサーから口を離して、そのまま口を閉じて約5秒間息止めをする ゆっくり息を吐き出す。


オープンマウス法 (口から離して吸入する方法)




口から3〜4cm離した状態で構える。 苦しくならない程度に息を十分吐き出す。 息を吸い込みは始めると同時に、容器の底をを1回押して、薬をゆっくり吸入する




そのまま口を閉じ、約5秒間息止めをする ゆっくり息を吐き出す。 吸入のあとすぐにうがをする。

クローズドマウス法 (直接、口にくわえて吸入する方法)は1〜3で、アダプターを歯の間で軽くくわえ、吸入します。
                                 (資料提供:大日本製薬)


キュバールはエアゾール製剤ですが、「シューッ」と噴射速度がマイルドですから、フルタイドエアゾール、アドエアエアゾールと違って、オープンマウス法、クローズドマウス法でそのまま吸入することが出来ます。
キュバールには
無水エタノールが添加され、粒子も小さいため、薬が末梢気道にまで到達するといわれています。
キュバールをそのまま吸入する場合、息を吸い込み始めると同時に、容器を押して
ゆっくり吸入しますが、なかなかこれが上手く出来ない患者さんがあります。そんなときには、スペーサーを使って吸入するとより上手に吸入できます。
キュバールとオルベスコのデバイス(吸入器具)は、いずれも米国スリーエム社製のもので、仕様はほとんど同じです。


エアゾール製剤はときどきアダプターの洗浄・乾燥を

エアゾール製剤のフルタイドエアーゾール、キュバール、オルベスコでは、ときどきキャップとボンベを外して水またはお湯で洗浄して、乾燥することが望まれます。ボンベは絶対に水でぬらさない。
洗浄は、キャップとボンベを外して、アダプターのみを写真のように水またはお湯で洗浄します。洗浄した後は乾燥させます。
これは、アダプターの噴射口が粉状になった薬でつまって噴射が弱くなることを避けるために行います。
まだ薬はあるはずなのに吸入器の噴射が弱くなってしまうことがあります。この原因の多くはアダプターの噴射口のつまりです。したがって、メーカーも1週間に1回以上kの洗浄をすすめていますが、ほとんどの患者さんは洗浄していないのが現状だと思います。せめて、まだあるはずなのに噴射が弱くなったときにだけでも洗浄するのが望まれます。なお、アドエアエアゾール、フルティフォームなどカウンター付きのエアゾール製剤ではボンベを外すことはできません。

まれですが、写真右側のようにアダプターの噴射口に粉が付着しているため噴射が弱くなったり、噴射しなくなることがあります。
応急的には乾燥した布またはティッシュで粉をふき取ればよい。

水道の水を流しながらアダプターを洗浄をしているところです。



3) オルベスコの吸入方法
 オルベスコ50、100、200

オルベスコは原則としてクローズドマウス法で吸入します。

●初めて使用するときは試し噴射を3回行い、噴霧を確認します。

吸入口のキャップを外す。 薬は絵のように持つ。 息を十分吐き出す。
息を止めたまま、吸入口を軽く歯でくわえ、しっかり唇でおおう 息を吸い込み始めると同時に、アルミ缶の底を1回しっかり押して、薬をゆっくり十分吸い込む そのまま口を閉じ、5〜10秒息を止める。(しっかり息止め)
ゆっくり息を吐き出す。 うがいをする。
                                      
                                 (資料提供:帝人ファーマ)


オルベスコはキュバールと同様に「シューッ」と噴射速度がマイルドですから、オープンマウス法、クローズドマウス法でそのまま吸入することが出来ますが、帝人ファーではクローズドマウス法を推奨しています。
オルベスコには
無水エタノールが添加され、粒子も小さいため、薬が末梢気道にまで到達するといわれています。
オルベスコをそのまま吸入する場合、息を吸い込み始めると同時に、容器を押して
ゆっくり吸入しますが、なかなかこれが上手く出来ない患者さんがあります。そんなときには、スペーサーを使って吸入するとより上手に吸入できます。

※キュバールやオルベスコをスペーサーを使って吸入する際、ボンベを押した
  瞬間にアダプターから煙のようにわずかエアゾールが漏れるのが見えますが、
  治療効果には影響はありませんので心配はありません。



4) フルタイド ロタディスクの吸入方法
 フルタイド ロタディスク50、100、200

ディスクへラーという器具を使用して吸入するロタディスクより簡便になったディスカスの方が優れています。

●いきなり使用開始で問題ありません。(使用前:準備操作必要なし)





カバーを開ける 吸入器をたいらに保ちフタを垂直になるまで立てる 再びフタを閉じる



6
吸入器をたいらに保ち、無理をしない程度に息を吐き出す。 吸入口をくわえたままはやく深く吸う
そのまま
数秒間息止めをす
うがいをする。

                         (資料提供:グラクソ・スミスクライン社)

フルタイドロタディスクでは、ドライパウダーを吸い込むわけですから、
「スーッ」と早く吸うのがコツです。吸う力が弱いと効果が上がりません。
当院では、簡便さ、局所的副作用の少なさ、ある程度吸入速度の低い患者さんでも使用できることなどから、ほとんどの患者さんが
フルタイドディスカスを使用しており、フルタイドロタディスクを使っている患者さんはごく一部しかありません。



            5) フルタイド ディスカスの吸入方法
            5) アドエア ディスカスの吸入方法
 フルタイド ディスカス50、100、200

あらゆる面で、フルタイドディスカスはフルタイドロタディスクの改良型といえます。
 アドエアディスカス100、250、500
    (セレベント/フルタイド)
   50/100、50/250、50/500
セレベントとフルタイドの合剤です。

●いきなり使用開始で問題ありません。(使用前:準備操作必要なし)







指をグリップにあて、グリップが止まるところまで回す マウスピースを自分の方に向けてもち、レバーをグリップのところまで押し付ける 軽く息を吐いてからマウスピースをくわえ、早く深く息を吸い込む。数秒間息を止めをする




リップに指をあて、カチリと音がするところまで回して閉じる。 うがいをする。
                         (資料提供:グラクソ・スミスクライン社)

ドライパウダーですから、「スーッ」と早く吸うのがコツです。ロテダィスクに比べると吸入に物足りなさがありますが、その点は
むしろ改良されていると考えた方が良いと思います。(添加されている乳糖が半分の量になっています)
フルタイドディスカスとアドエアディスカの操作はまったく同じです。



6) パルミコートの吸入方法
  シムビコートの吸入方法
 パルミコート タービュヘイラー100、200
 シムビコートタービュヘイラー30、60吸入

パルミコート、シムビコートは初めて使用するときに準備操作が必要です!
●パルミコートは最初に「クルッ」「カチッ」の手順を2回繰り返してから、
  以下のように使用を開始します。(すなわち、最初は「クルッ」「カチッ」の操
  作を3回行ってから吸入することになります。2回目からは「クルッ」「カチッ」
  の操作は1回のみで吸入できます)
●シムビコートは最初に「カチッ」「クルッ」「カチッ」「クルッ」「カチッ」と行って
  から、以下のように使用を開始します。

パルミコートとシムビコートは最初にキャップをあけたときのグリップの位置が
ちがいます。パルミコートは左で止まっていますが、シムビコートは右で止まっ
ています。したがって、
準備操作がシムビコートでは「カチッ」が1回多くなり、
「カチッ」、「クルッ」「カチッ」「クルッ」「カチッ」と2回半ということになります。
パルミコートは「クルッ」「カチッ」「クルッ」「カチッ」と2回ということになります。
準備操作をした後は、パルミコートもシムビコートもまったく同じです。
初回の準備操作
パルミコートは「カチッ」を2回してから、以下のように使用を開始。
シムビコートは「カチッ」を3回してから、以下のように使用を開始。

パルミコートとシムビコートは準備操作にわずかなちがいがありますが、使用方法はまったく同じです



キャップを反時計回りに回して外す。 吸入器を垂直に保ち、茶色の回転,グリップを「クルッ」と反時計回りに止まるまで回す。 時計回りに「カチッ」という音がするまで回して戻す。

薬剤を吸入する前に息をはく マウスピースをくわえ、薬を深く「スーッ」と力強く吸い込む。(息止めは必要なし)
マウスピースから口を離してゆっくり息を吐く。
キャップを閉じる。
うがいをする
                           (資料提供:アストラゼネカ社)

パルミーコートは吸入する薬の量が非常に少ないこともあって、薬が入っているという感じはありませんが、
まちがいなく入っていますので心配はいりません。粉末の量が多いフルタイドディスカスからパルミコートに変更すると「吸った感じ」がしなくて、不安になるかもしれませんが、まちがいなく入っていますので心配ありません。
心配な場合は、タービュヘイラー練習器でチェックしましょう。

パルミコートはドライパウダーですから「スーッ」と早く吸う必要があります。


タービュヘイラー
グリップサポーター



高齢者などではパルミコートのグリップがやや小さいために、「クルッ」「カチッ」と操作するのがやりにくい場合があります。
そんな場合のために、パルミコートの発売元であるアストラゼネカ社は写真に示すようなタービュヘイラー・グリップサポーターを配布してます。使い方はキャップを外してパルミコートの本体をグリップサポーターの穴に刺し込みます。そして、本体の真ん中を一方の手で持って、もう一方の手(利き手)でグリップサポーターを右に止まるまで回してから逆に左に音が「カチッ」とななるまで回します。そして、吸入をします。


7) アズマネックスの吸入方法
 左:アズマネックス ツイストヘラー100
 右:アズマネックス
ツイストヘラー200

●いきなり使用開始で問題ありません。(使用前:準備操作必要なし)




吸入器をまっすぐ立てて持ち、キャップをカチッと音がするまで左に回して、上に引っ張るようにしてキャップをはずす。 息を吐ききってから、マウスピースを口にくわえ、水平にして唇をしっかり閉じて、強く、深く、息を吸い込んで吸入する。
吸入器を口から離し、無理をしない程度に軽く息を止める。

キャップをカチッと音がする最後まできちんと閉じて、うがいをする。

吸入後はカチッと音がするまではめないと、次回の準備が出来ません。

カウンターの数字が0になるとキャップが回らなくなるロックアウト機能が付いています。
                          (資料提供:シェリング・プラウ社)

アズマネックスは吸入する薬の量が非常に少ないこともあって、薬が入っているという感じがあまりありませんが、吸う力が弱い患者さんでも十分吸えるように工夫されていますので、まちがいなく入っていますので心配はいりません。
粉の量が少ないと吸った感じがしないので強く吸いがちになりますが、アズマネックスはあまり強く吸い過ぎると嗄声が出現する原因になることもありますので、
あまり強く吸い過ぎない方が良いようです。


8) フルティフォームの吸入方法
 フルティフォーム50、125

●初めて使用するときは試し噴射を4回行い、噴霧を確認します。




吸入器をよくフ振ります 吸入器をくわえる前に、軽く息を吐いてください。 吸入口を軽く歯でくわえ、息を吸いながらアルミ缶を押し、お薬をゆっくり深くい吸い込みます



お薬を吸い込んだ後は、吸入口を口から離し、そのまま3秒以上息を止めてください ゆっくり息を吐き出します。医師に指示された回数、1〜5を繰り返します。 吸入後には必ずうがいをしてください。ガラガラ・ブクブクを2回以上繰り返すと効果的です。
                                 (資料提供:杏林製薬(株))
フルティフォームはクローズドマウス法でュバールやオルべスコと同じように吸えば、大半の方で上手に吸入できます。薬剤の噴射速度がややマイルドですから、クローズドマウス法で十分吸入は可能と思われます。どうしても上手く吸えない人では、スペーサーを使用して吸入します。


9) レルベア吸入方法
 レルベア100、200
 






カバーを「カチッ」と音がするまで開ける。
カウンターの数を確認する。
息を吐き出してから、マウスピースをくわえ、強く深く{「スーッ」と息を吸い込む
マウスピースから唇を話し、そのの3〜4秒程度息を止め、その後ゆっくり息をはく。
吸入後には必ずうがいをする。

                           (資料提供:グラクソ・スミスクライン社)
レルベアはカバーを開けて吸うだけですから非常に簡単です。現在発売されている吸入ステロイド薬およびその配合剤の中で最も簡単です。しかも、1日1回だけの吸入薬です。とにかく簡便で患者さんにも好評のようです。

フルタイド・ディスカス、パルミコート、アズマネックス、アドエアディスカス、シムビコート、レルベアは操作が非常に簡単で、吸入もあまり上手下手がないようです。ただし、高齢者や小児ではスペーサーを使用して吸入するフルタイドエアーゾール、キュバール、オルべスコ、アドエアエアゾール、フルティフォームの方が適している場合があります。
フルティフォームはほとんどの例でクローズドマウスで吸入が可能で、その場合は操作も非常に簡単です。
フルタイドディスカス、パルミコート、アズマネックス、アドエアディスカス、シムビコート、レルベアのドライパウダー製剤では、はやく深く吸入しますが、具体的には「ソバをすする強さ」「ジュースをストローで吸う強さ」(それより若干弱い程度)が適切といわれています。


ドライパウダー製剤が吸えているかどうか?

フルタイドディスカス、パルミコート、アドエアディスカス、アズマネックス、シムビコートなどのドライパウダー製剤では、一定の速度で吸入しないと肺に十分な薬が到達しません。一般に吸入速度(吸気流速:インチェックで測定)が、フルタイド、アドエアのディスカスおよびパルミコート、シムビコートのタービュへイラ―では30L/分以上であれば、アズマネックスのツイストヘラ―では20L/分以上であれば、肺に十分な薬剤が到達するとされています。また、フルタイドロタディスクでは60L/分以上が必要とされています。
インチェックや下記に示す練習器を使用しない場合、またはない場合、
「ソバをすする強さ」「ジュースをストローで吸う強さ」で吸うと指導すると良いと思います。吸気流速が低下している患者さんの大部分は「ソバがすすれない」と言われます。したがって、「ソバすすれますか?」とたずねて「すすれます」と言われたら、「そばをすする強さで吸入にしてください」と指導すればよいと思います。
ディスカス、タービュへイラ―では吸気流速が30L/分以上であれば肺に十分な薬剤が到達するとされていますが、
私のところでは40L/分を目安に、それ以下の場合はエアゾール製剤のアドエアエアゾール、フルタイドエアーゾール、キュバール、オルベスコ、フルティフォームを使用するようにしています。
なお、吸気流速は
インチェックという簡単な器具で測定することができます。十分吸入できているか心配な方は一度インチェックで測定することをおすすめしますが、現在のところ、喘息を専門に診療されている以外の病院にはあまり使われていないようです。

         ※インチェック

    
          インチェック
       英国クレメントクラーク社製
          輸入発売元:松吉医科器械
インチェックは吸入速度(吸気気速、吸気流量)を簡単に測定する器械です。(英国クレメントクラーク社製、輸入発売元:松吉医科器械梶j
本体にディスクへラー用(フルタイド)、ディスカス用(フルタイド)、タービュヘイラー用(パルミコート)のアダプターをつけ、さらにマウスピースをつけて吸います。
非常に簡単な器械です。

ドライパウダーが確実に吸えるかどうか、あるいは、確実に吸えているかどうかを簡単にチェックするものです。

※タービュヘイラー練習吸入器
アストラゼネカ社ではパルミコートおよびシムビコートで同型のタービュヘイラー練習器を作成していて、パルミコート、シムビコートがうまく吸えているか、どのくらいの力で吸うかを判定するものがあります。
確実に「プー」と音がすれば上手に吸えていると判定します。



(パルミコート用)
タービュヘイラー
練習吸入器


(シンビコート用)
タービュヘイラー
 練習吸入器
※ツイストヘラ―吸入操作練習用具器
MSDはアズマネックスを正しく吸入できるように練習するための器具「ツイストヘラ―吸入操作練習用具」を作成配布しています。
マウスピース(吸入口)を口にくわえそのままはやく深く息を吸い込みますが、正しく吸入すると「ピーー」という音が鳴るようになっており、「ピー」という音が鳴ったら、それ以上に強く息を吸い込む必要はないということを示します。

「ツイストヘラ―吸入操作練習用具


※ディスカス トレーナー
グラクソ・スミスクライン社は、患者さんにフルタイドディスカ、セレベントディスカス、アドエアディスカスを正しく使用し、正確に吸入できるように練習するための器具「ディスカストレーナー」を作製・配布しています。
マウスピース(吸入口)を口にくわえそのままはやく深く息を吸い込みますが、正しく吸入すると「プー」という音が鳴るようになっており、「プー」という音が鳴ったら、それ以上にはやく息を吸い込む必要はいということを示します。
器具は吸気速度が30L/分以上あれば音が鳴る仕組みになっているようです。

ディスカス トレーナー
※ディスカストレーナーとタービュヘイラー練習器では、「ブッ―」と音がするために、タービュヘイラー練習器の方吸う力が必要な感じです。

※エレプタトレーナー
グラクソ・スミスクライン社は、患者さんにレルベア、COPD治療のアノ―ロ、エンクラッセを正しく使用し、正確に吸入できるように練習するための器具「エリプタトレーナー」を作製・配布しています。
蓋を開けて吸うだけという簡単なもので、ちゃんと吸えているんか確認するもので、吸えていれば「プー」と音がします。



シムビコートとアズママネックスは、患者さんが吸った感じがしないということが良くあります。したがって、あらかじめ練習機やトレーナーでチェックした上で、「吸った感じがないかもしれませんが、ちゃんと吸えてますから」と言ってフげると親切だと思いです。
パルミコート、シムビコート、アズマネックスでは粉末の量が少ないため、吸えているかどうか患者さんが不安を持つことがあります。そういう場合は確認用ハンカチを使用して、ハンカチに白い粉末がついていることを確認してもらって、吸入できていることを認識してもらうとよい。

    
   シムビコート吸入確認用       アズマネックス吸入確認用
       ハンカチ                 ハンカチ



薬の残量の確認

キュバール、オルベスコ、フルタイドエアゾールのカウンターの突いていないエアゾール製剤では薬の残量の確認が必要となりますが、あらかじめ使用量から1本で何日分あるかを計算し、その日が来たら新しいものに交換することが一番確実な確認方法です。そのためにはラベルに使用開始日を記入しておくと便利です(メーカーが「○月○日で終了」というシールを用意しています)。
なお、キュバール、オルベスコは完全溶解系ですから最後まで使い切ってもほとんど問題ないと考えられますが、
フルタイドエアゾールは完全溶解系ではありませんので、カラになるまで使い切るのは良くありません。なぜなら、規定の噴射回数を超えても20〜30噴射余分に噴射することがあり、その分には薬の成分がほとんど含まれていない可能性が高いからです。(ちなみに、フルタイドエアゾール100は60回で終了となっていますが、カラになるまで噴射し続けると95回前後噴射されます。60回を超えた35回分には薬の成分がほとんど含まれていない可能性があり、カラまで使い切っていると喘息のコントロールが不良になる可能性が非常に高くなります)
なお、フルタイドエアゾールの残量は水を入れたコップの中にボンベを浮かばせる方法である程度調べることができますが、この方法は噴射口がつまる原因になることがありますのでしない方が良いそうですで。
ボンベを手に持って振ることで残っているかどうかわかりますが、どのくらい残っているかを知ることはほとんど出来ません。

ドライパウダー製剤のフルタイドディスカス、パルミコート、アドエアディスカス、アズマネックス、シムビコート、レルベアとエアゾール製剤のうちアドエアエアゾール、フルティフォームには
“ドーズカウンター”が付いています。

カウンター付きの吸入ステロイド薬

フルタイドディスカス アドエアディスカス アドエアエアー
右上の小窓がカウンターで1回ずつ残り回数を数字で表示 右上の小窓がカウンターで1回ずつ残り回数を数字で表示 吸入器本体の背面下にカウンターがあり、1回ずつ残り回数を数字で表示
アズマネックス シムビコート
シムビコートの残量はフルタイドディスカス、アドエアディスカス、アドエアエアゾ―、アズマネックス、などのように1回ずつの表示はされず、
下の写真に示したように表示します。

吸入器下部にカウンターがあり、1回ずつ残り回数を数字で表示。数字はタテ読み 吸入器上部にカウンターあり、数字は1回ずつ表示されるるのではなく、60吸入では20刻みになっていて、実際に数字が表示されているのは60、40、20、0だけ、30吸入では15、30、0だけとなっています
    30吸入                    60吸入


パルミコートは“終了お知らせ小窓”で残量が確認できるようになっています。
パルミコートが終わったかどうかを、容器を振って音を聞いている患者さんがありますが、パルミコートはカラになっていても内臓されている乾燥剤の音がしますので、振ったときの音で終了を見分けることはできません。

パルミコート終了マークの注意
パルミコートでは写真右のように赤いマークが下まで来たら終了となっていますが、ときに、終了しているにもかかわらず写真左のように赤いマークが完全に下まで来ない場合もありますのでご注意ください。

フルティフォーム レルベア
本体正面の中ほどにあるカウンターの背景が、使用していると緑色→黄色→赤色と変わっていくが、赤色で0になったら終了。 吸入器下部にカウンターがあり、1回ずつ残り回数を数字で表示。字が大きく見やすい。120

フルティフォームのカウンター表示



キュバール残量計

エアゾール製剤のベコタイド、キュバールでは残量の確認に欠点がありますが、キュバールではおおまかな残量が確認できる「キュバール残量計」という簡単なスケールを作製されています。
アダプターからアルミ容器を取り出し、その先端を満タン、約3/4、約半分、約1/4、わずかと指定してある穴のいずれかにセットし、左右の重さがつりあう位置が残量ということになります。

キュバール残量計

※オルベスコ専用残量目安計(ピヨスケ)


オルベスコにも残量目安計(ピヨスケ)があります。
ヒヨコの形をしたプラスチックに穴が開いていて、そこにアダプターからボンベを外して入れる簡単なものです。残量はその傾き具合で大まかな残量がわかるようになっています。写真左は半分程度噴射液が入っている状態です。正確に何回あるかはわかりませんが、大体の目安になります。

オルベスコ専用残量目安計


※エアゾール製剤の残量確認シール
使い始めに、あらかじめシールに噴霧が終了する月日を記入し、その日が来たら終了とします。シールは吸入器の側面に貼ります。
フルタイドエアゾール
フルタイドエアー50は120噴霧、フルタイドエアー100 は60噴霧使用できます。したがって、その噴霧回数を1日の使用噴霧回数で割ると終了する月日が特定できます。

フルタイドエアゾール100を噴射し続けると約95回が噴射されますが、噴射し終わるまで使用せず、60噴霧で終了しなくてはいけません。


キュバール
キュバール50、キュバール100ともに100噴霧となっていますが、実際には120噴霧まで使用できるようです。
なお、キュバールを噴射し続けると123〜125回噴射されます。



オルベスコ
オルベス50、オルベス100ともに112噴霧、オルベス200は56噴霧まで使用できます。





スペーサー(吸入補助器具)

フルタイドエアゾール、アドエアエアゾール、キュバール、オルベスコ、フルティフォームのエアゾール製剤を使用するときに、同調(噴射と吸うタイミング)がうまくできない場合があります。また、エアゾール製剤は「ゆっくり吸う」ことがポイントですが、ゆっくり吸えない場合があります。スペーサーはそんな時に使用します。

吸入薬の噴射速度が速いフルタイドエアゾール、アドエアエアゾールの使用にあたっては、吸入効果を高めるために、また局所的副作用(口やのどの刺激感、口腔カンジタ症など)を防ぐためにスペーサーを使用する方が良いと考えます。
なお、キュバール、オルベスコではスペーサーを使わず、そのままゆっくり深く吸入しても構いませんが、上手に吸入できない人はスペーサーを使った方が良いと思います。

スペーサーについて
日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会では、静電気が発生しにくいアルミニウム製のものか洗剤で事前処理(コーティング)が行なわれているもので、かつ多様な薬剤に対して普遍的に使用でき、空気力学的ならびに臨床的検討が既になされているなどの点からエアロチャンバープラス、オプティヘラー、ボアテックスの3種類を推奨しています。

スペーサ内に静電気が発生するとスペーサー内に薬剤が付着することがあります。

エアロチャンバープラス
(マウスピースタイプ)

アムコ社
オプティヘラー

レスピロニクス社
ボアテックス
(アルミ製)

パリ社
記の三つのスペーサーが日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会が推奨しているスペーサーです。。(使用有効期間は1年間で、いずれも、洗浄、消毒が必要です。

当院で、スペーサーは静電気が発生しにくいアルミ製のボアテックスを使用しています。

  スペーサーを使用するメリットは
 ・同調の必要がなくなる。
 ・吸入効率を高める。
 ・局所的副作用が防止〜軽減できる。

               の3点です。

エアゾール製剤は速く吸い過ぎると、吸入薬が咽喉頭へ付着する率が高くなります。




エアロチャンバープラス、ボアテックス、オプティヘラーは有料で、2000円〜3000円かかりますが、今年4月の保険改訂で、院外処方で薬局で出せば
保険適応になるようですから、スペーサーを使用している患者さんの負担は減ることになります。ただし、5歳未満と65歳以上(2016.2.26記)


乳幼児用

スペーサーで吸入できない乳幼児では右図のようなエアロチャンバープラス・マスクタイプ、ボアテックス・マスク付を使用して吸入します。
いずれもマスクで口と鼻を空気が漏れないようにおおい、薬剤を噴射して呼吸する感じで吸います。
エアロチャンバープラス
(マスクタイプ)
ボアテックスマスク付き

加圧定量噴霧式吸入器補助具


専用噴霧補助具
(オルべスコ)
ベラーエイド
(アドエア)
フルプッシュ
(フルティフォーム)
ベラーエイド
(サルタノール)
加圧定量噴霧式吸入器は吸入する際にボンベの底をプッシュしなければなりませんが、高齢者で力のない人はプッシュできないことがあります。そこで各社は押すのを補助する器具を配布しています。補助具をpMDIに装着して片手に持って握る、あるいは押すと噴射します。
参考までにサルタノール、メプチンの補助具の写真も掲載しました。
メップレップ
(メプチン)




吸入ステロイド薬による早期治療











喘息は早期の治療が大切だと考えます。一般的に喘息を発病して2年以内に治療することを早期治療(early intervention)といいますが、できれば、発病6ヶ月以内に吸入ステロイド薬を使って治療するのがもっとも望ましいと考えます。
まだ軽いから吸入ステロイド薬は使わなくても良いと思うかもしれませんが、喘息を悪化させないためには、
軽いうちに積極的に吸入ステロイド薬を使用したほうが良いと考えます。早期治療をすると、吸入ステロイド薬を中止しても、喘息の発作がほとんどおこらなくなるケースがかなりあります。
私は、喘息になったら早目に吸入ステロイド薬を使って治療することが非常に大切だと考えていますが、これも、吸入ステロイド薬が内服や注射のステロイド薬とちがって、通常使用量(低用量〜中用量、一時的な高用量)ではほとんど副作用がないから言えることです。



吸入ステロイド薬の早期に導入に関してして、Selroosらが報告(Selroos O et
  al.Chest 1995:108:1228)していますが軽症・中等症の患者さんにブデソニド800
  μg/日を2年間投与したところ、発病2年以上経過した患者さんではピークフロ
  ー値が
有意に改善せず、その後、10年後の追跡でも同じようであった述べてい
  ます。すなわち、発病2年以内に吸入ステロイド薬を使用すると肺機能(ピーク
  フロー)は有意に改善し、発病2年以上経過すると吸入ステロイド薬を使用して
  も有意に改善しないと報告しています。
 
喘息にかかったら早期に吸入ステロイド薬を使用することの重要性を示してい
  ますが、私自身も長年喘息治療をして来て、そのように感じております。まだ
  まだ、「吸入ステロイド薬は使いたくない」「吸入ステロイド薬はなるべく使いた
  くない」と、吸入ステロイド薬の使用に抵抗のある方も多いですが、医師のみ
  ならず患者さんも「喘息になったら早期に吸入ステロイド薬」と思われる時代
  が来ると良いと考えています。早期治療することによって喘息の経過が非常
  に良くなると思いますし、重症化することも少なくなると思います。
  喘息でも
早期診断・早期治療(吸入ステロイド薬)が大切だと思います。




いつまで続けるのか?

この質問に明確な回答はありませんので、私の意見を述べます。

一般に発作も症状もなく、経過が非常に良くても吸入ステロイド薬を中止すると大部分の喘息は悪化するといわれています。確かに吸入ステロイド薬は喘息を根本的に治癒させてしまう薬ではありませんので、その可能性は非常に高いといえます。しかし、中止して悪化しない患者さんがいないわけではありません。事実、私の経験でも吸入ステロイド薬を中止しても悪化していない患者さんが10〜20%程度あります。そういう患者さんの特徴は
  
小児喘息の患者さん
軽症〜中等症の患者さん
発病早期(2年以内)に吸入ステロイド薬を使用した患者さん
症状が改善しても、数年間吸入ステロイド薬を規則的に使用していた患者さん

などです。
私自身は発作がおこらなくても何らかの症状が少しでもある患者さんやピークフロー値が低い患者さんでは、中止すると悪化する可能性が非常に高いのでしばらく続けるべきだと考えます。まったく症状がなく、ピークフローもきわめて良好な状態が数年続いたら中止を考えてもいいと思いますが、一部の患者さんでは再発がみられることがあります。したがって、吸入ステロイド薬は軽症の喘息を除いてなかなか中止できないというのが現状ではないかと思います。
ただし、
小児の場合は中止できるケースがほとんどです。しかも、多くのケースで中止しても再発はみられておりません。そういう意味では、コントロール不良な小児で吸入ステロイド薬を一定期間使用することは大変意義があるのではないかと思います。

現実には「いつまで続けるのか?」という前に、患者さんが自分の判断で中止してしまうケースが非常に多く見られます。残念ながら「良くなったから」「発作が出なくなったから」と自分の判断で吸入ステロイド薬を中止して再発を繰り返しているケースが非常に多くみられます。
実際、「長く歩くと息苦しい」「階段を上ると息苦しい」「走ると息苦しい」「重いもの持つと息苦しい」「朝や早朝に咳や痰が出る」などの症状があるのにもかかわらず、自分の判断で吸入ステロイド薬を中止したり、減らしたりする患者さんが非常に多くあり、私自身も大変困っているのが現状です。やはり、喘息は簡単に完治する病気ではありませんので、
何らかの症状が少しでもあれば続けるべきだと思います。
もしかしたら、患者さんが指示どおりにきちんと吸入ステロイド薬を使いつづけてくれれば、もっと中止しても再発しない患者さんが増えるのではないかと思っています。

吸入ステロイド薬の継続性

下図は1994年に当院で吸入ステロイド薬の投与を開始した成人喘息143名について使用経過を見たものですが、18年後まで吸入ステロイド薬を規則的に使用していたのは11.2%で、不規則章を含めても継続して使用していたのはわずか14%でした。

18年目で府受診は66%にまで達しており、その90%以上は症状が改善して府受診になっています。とくに3年以内の不受診が非常に大間なっています。

とくに、使用後3年以内の不受診が非常に多くなっております3年後には不規則継続を含めて、50%以下、7年後には30%以下の人しか継続していません。
喘息が義堂の慢性炎症ということを考えると、「これでよいのだろうか」ということになりますが、症状が改善すると受診しなくなってしまうというのが現状でもあります。


吸入ステロイド薬の中止について(私見)

吸入ステロイド薬は喘息が気道の慢性炎症という観点から、継続して使用するのが原則で、
ガイドラインにも中止しても良いかどうかについては、どこにも記載してありません

しかし、症状が改善すると
●次第に治療に熱心でなくなる。●自分の判断で中止することが多い。●受診しなくなってしまう患者さんが多い。というのがのが現状です。
そのために再発をくり返したり、悪化する患者さんもあります。

しかし、長年実際に中止した患者さんを見ておりますと、
:軽症の患者さんでは再発や悪化する患者さんが多くはないのではという気もします。
色々な考え方がありますし、患者さんごとに違いはありますが、以下重症度と吸入ステロイド薬の中止について、私の経験をもとに、
私の意見として記載しました。したがって、このようにすべきだということではありませんのでご承知下さい。参考にしていただけたらと思います。

軽症間欠型では一定期間(3〜6ヵ月)吸入ステロイド薬を使用するだけで中止
  ても再発しないで、無症状の状態が続く患者さんがかなりあります。

  無症状の状態が続いても成人の喘息では「治癒」「治った」と言う言葉は使いませ
  ん。それは、いつまた再発するかも知れないと考えられるからです。したがって、
  無症状の状態が続いていることを「寛解」と言いますが、軽症間欠型では一定期
  間吸入ステロイド薬を使用すると寛解状態になる患者さんはかなりあるように思い
  ます。かぜなどによって一時的に症状が出ることがありますが、ひどくはなく治療
  ですぐに改善し、多くはまた寛解状態が続くケースが多いようです。

軽症持続型では、一定期間(1〜3年)吸入ステロイド薬を使用すると、中止しても
  再
発しない寛解状態になる患者さんがいますし、中止→再発→使用→中止→再
  発をくり返す患者さんもいます。ただ、
一定期間吸入ステロイド薬を使用すると中
  止から再発までの期間が長く、再発してもそれほどひどくならいように思います

  一方、再発しても中止したままでいて中等症持続型に移行するという患者さんもと
  きにあります。
  軽症持続型では、
吸入ステロイド薬を使用していて
1年以上無症状 が続けば中止
  しても良い
のではないかと思いますが、その前に患者さんが受診しなくなる、自分
  の判断で中止している患者さんが多い、というのが現状です。

中等症持続型では、中止すると数ヶ月〜半年で再発するケースが非常に多く見
  られます。したがって、吸入ステロイド薬は
中止してはいけないと考えるのが妥当
  だと思いますが、低用量または最低用量の吸入ステロイド薬を使用していて
無症
  状の状態が2年以上続けば中止を慎重に考慮しても良い
と私は考えています。
  実際に中止して寛解状態が続いている患者さんもありますが、大半は中止すると
  再発することが多く、やはり、中等症持続型では継続して使用するのが原則だと
  思います。

重症持続型では、中止すると大部分はすぐに(1ヵ月以内)再発します。
中止する
  と強い発作が出て危険なこともありますので、重症持続型では10年以上、20年以
  上といった長期間の使用が原則となります。当院では20年以上継続使用している
  患者さんが50名ほどいますが、その患者さんたちで現在も非常に症状がひどいと
  いう患者さんはほとんどなく、重症持続型でも長期に吸入ステロイド薬を使用して
  いると病状は安定すると考えています。ただし、中止するのは大変難しいと思いま
  す。

まとめますと、軽症間欠型では一定期間(3〜6ヵ月)の使用で中止しても良い、再発すれば一時的に再使用。軽症持続型では一定期間(1〜3年)の使用で、1年間無症状であれば中止しても良い。ただし、再発すれば一定期間の再使用。中等症持続型、重症持続型では原則として長期使用、ただし、中等症持続型では2年間無症状であれば慎重に中止を考慮しても良い。ということになります。
いずれにしても、中止して再発したら再使用するのが大変重要だと思います

以上は、吸入ステロイド薬使用38年の経験と、患者さんが良くなると受診しなくなるという見地に立った私見であって、決まりではないことを十分ご承知下さい。




使用状況

吸入ステロイド薬を使用するにあたっての重要なポイントは、(1)適切な用量を、(2)正しい吸入方法で、(3)定期的に継続することですが、その使用状況を調査しましたところ以下のとおりでした。

1  用量の不適切 23.3%
2  吸入方法の不適切 13.2%
3  継続使用の不適切 49.1%
(2000年1,231名)

最も不適切な割合が多かったのは継続使用の不適切でした。
その理由は下図に示すように、「調子がいいから」というのが大半で、
吸入ステロイド薬は症状が良くなるために忘れやすい、あるいは中止・中断しやすい薬であるといえます。そのために再発を繰り返している患者さんが非常に多くいます。良くなってもしばらく続けることが吸入ステロイド薬を使用するにあたって最も重要なポイントではないかと思います。

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