長時間作用性吸入β2刺激薬
(LABA)




喘息予防・管理国際指針(GINA2006)では、長期管理薬として成人の治療ステップ3〜5では、吸入ステロイド薬に長時間作用性吸入β2刺激薬(Long Acting β2 Agonist=LABA)の併用を推奨しています。
2002年6月、日本でも初の長時間作用性吸入β
2刺激薬キシナホ酸サルメテロール(商品名:セレベント)が発売され、わが国でもGINAガイドラインに基づいた治療が行えるようになりました。そこで、長時間作用性吸入β2刺激薬について解説します。


β2刺激薬の分類

作用時間型 投与経路 製品名 使用目的
短時間作用性β2刺激薬 吸入薬 サルタノールインヘラー
アイロミール
メプチンエアー
メプチンスイングヘラー
メプチンキッドエアー
ベロテックエロゾル
ベネトリン吸入液
メプチン吸入液など
発作治療薬
(リリーバー)
経口薬 ベネトリン錠
ブリカニール錠
ベロテック錠など
長時間作用性β2刺激薬 吸入薬 セレベント
オンプレス
オーキシス
長期管理薬
(コントローラー)
貼付薬 ホクナリンテープなど
経口薬 メプチン錠
スピロペント錠
ホクナリン錠など
長時間作用性β2刺激薬

吸入ステロイド薬
吸入薬
(配合剤)
アドエア
シムビコート
フルティフォーム
レルベア

β2刺激薬は、気管支平滑筋のβ2受容体に作用して気管支を拡張させる薬(気管支拡張薬)で、短時間作用性と長時間作用性に分けられます。短時間作用性は発作治療薬として、長時間作用性は長期管理薬として使用します。
長時間作用性吸入β2刺激薬は、現在のところわが国ではセレベント(一般名:サルメテロール)とオンプレスオーキシスしか発売されていませんが、オンプレスとオーキシスはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)には適応がありますが、気管支喘息にはありませんので、以下、セレベントとして説明します。
なお、吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入β2刺激薬の配合剤として、セレベント(サルメテロール)はアドエアがあります。ホルモテロールはシンビコートとフルティフォームとして、それぞれ2007年と2010年、2013年に発売されています。





セレベントの特徴

サルメテロールキシナホ酸塩

セレベント(SLM)

吸入LABA
(Long Acting β
2 Agonist)
長時間作用性吸入β2刺激薬


   (規格)

 セレベント
  ロタディスク25
  ロタディスク50


 セレベント
  ディスカス50

              セレベントの海外商品名=Serevent、Atmadisc


1  長時間気管支拡張作用がある
2
  β2受容体に対する高い選択性がある
3   1日2回の定期吸入により優れた気管支拡張作用を示す
4  喘息による夜間症状を抑制する
5  短時間作用性吸入β2刺激薬の使用回数を減少させる
6  吸入ステロイド薬との併用で優れた臨床症状の改善を示す
7  長期投与により気管支拡張作用の減弱を認めない
8  長期投与により短時間作用性吸入β2刺激薬の効果減弱を認めない

セレベントは投与後約15分で効果が発現し、効果は約12時間以上持続するといわれています。
セレベントは気管支平滑筋のβ2受容体に対して高い親和性と選択性を示します。
吸入β
2刺激薬は選択的にβ2受容体に作用して気管支拡張作用を示しますが、わずかですがβ1受容体を刺激してし心臓刺激作用を示すことがあり、そのため、 吸入β2刺激薬を使用すると動悸がすることも一部にあるあるとされていますが、セレベントはβ2受容体に対して高い選択性があるため、優れた気管支拡張効果を示すとともに、動悸などの心臓刺激作用が非常に少ないといわれています。
セレベントは吸入ステロイド薬との併用で優れた臨床効果を示します。
当院ではすでに多くの患者さんで、吸入ステロイド薬にセレベントの併用あるいは吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入β2刺激薬の配合剤を使用していますが、
症状の改善、ピークフロー値の改善、夜間症状の改善、短時間作用性吸入β2刺激薬使用回数の減少などの成果を得ています。
セレベントは長期投与により気管支拡張作用の減弱(耐性)や短時間作用性吸入β2刺激薬の効果減弱は認められないといわれています。
GINAガイドライン(喘息予防・管理国際指針)で、セレベントは成人の治療ステップ3〜5で基本的薬剤となっています。
なお、セレベントは世界110ヶ国以上で承認されています。
「非常に優れた気管支拡張薬」というのが、セレベントを使用した私の感想です。
なお、当院ではセレベントの導入によって、短時間作用性吸入β2刺激薬だけでなく、ロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン、シングレア、キプレスなど)、テオフィリン徐放性製剤(テオドールなど)長時間作用性貼付β2刺激薬(ホクナリンテープ)、長時間作用性経口β2刺激薬(メプチンなど)の使用量が著しく減少しています。

重要な基本的注意(添付文書より)
気管支喘息治療の基本は、吸入ステロイド剤等の抗炎症剤の使用であり、吸入ステロイド剤等により症状の改善が得られない場合、あるいは患者の重症度から吸入ステロイド剤等との併用による治療が適切と判断された場合にのみ、本剤と吸入ステロイド剤等を併用して使用すること。本剤は吸入ステロイド剤等の抗炎症剤の代替薬ではないため、患者が本剤の使用により症状改善を感じた場合であっても、医師の指示なく吸入ステロイド剤等を減量又は中止し、本剤を単独で用いることのないよう、患者、保護者又はそれに代わり得る適切な者に注意を与えること。
(2006年3月添付文書改定より)



セレベントの使用方法

セレベントはドライパウダー製剤で、フルタイドと同様にディスクへラーまたはディスカスで吸入します。
       使用量:成人では1回50μgを1日2回(朝および就寝前)
            小児では1回25μgを1日2回(朝および就寝前)
吸入方法

セレベント ロタディスク





カバーを開ける 薬(ディスク)に穴をあける。 吸入器をたいらに保ちフタを垂直になるまで立て、再びフタを閉じる



6
吸入器をたいらに保ち、無理をしない程度に息を吐き出す。 吸入口をくわえたままはやく深く吸う
そのまま
数秒間息止めをする。
白いトレーを引いてから戻し、残りの回数を表示させる。


セレベントディスカス
アドエア ディスカス







指をグリップにあて、グリップが止まるところまで回す マウスピースを自分の方に向けてもち、レバーをグリップのところまで押し付ける 軽く息を吐いてからマウスピースをくわえ、早く深く息を吸い込む数秒間軽く息を止めをする



 セレベントディスカスは、
 現在、1回50μgのものし
 かなく、1回25μgのもの
 はありません。
リップに指をあて、カチリと音がするところまで回して閉じる。
セレベントディスカスはフルタイドディスカスと容器も使用できる回数(60回分)も同じで、同じ方法で吸入します。なお、アドエアディスカスは28回分です。
セレベントは必ず吸入ステロイド薬と併用して使いますが、先にセレベントを使用して、次に吸入ステロイド薬を使用して、その後、必ずうがいをして下さい。





セレベントの位置づけ

セレベントは吸入ステロイド薬を使用していてもコントロールが悪い場合に、追加併用する薬剤です。いうまでもありませんが、吸入ステロイド薬が喘息治療の中心的薬剤です。
GINAガイドラインでは成人治療ステップ3〜5で吸入ステロイド薬に併用するのが基本となっています。(現在は配合剤で使用できます)
吸入ステロイド薬に追加併用する薬としては、セレベント以外にロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放性製剤、長時間作用性β2経口または長時間作用性貼付β2刺激薬がありますが、私自身は、治療効果、安全性の面からGINAガイドラインが推奨しているセレベントを第1選択薬と考えています。(配合剤が第1選択ということになります)
長年、喘息治療を行っていますが、現在のところ、吸入ステロイド薬以外の薬でセレベントが最も効果的かつ安全性の高い薬だと考えています。
私自身の経験では、ロイコトリエン受容体拮抗薬、またはテオフィリン徐放性製剤、または長時間作用性β
2経口・貼付刺激薬を追加併用するよりも、セレベントを併用する方が効果的であると考えています。
私のところでは、「必要以上に多くの薬剤を併用しない治療」を目標にしていることもあり、毎日使用する薬は、吸入ステロイド薬のみ、または吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入β2刺激薬配合剤のみという患者さんが大部分を占めています。もちろん、それだけではコントロール不良な患者さんもありますが、そういう患者さんは非常に少ないとうのが現状です。
私は、
効果がないと思われる薬を漫然と使用するのは避けるべきと思います。使用している薬の効果を検証しながら、効果がないと考えられる薬は中止していくべきだと思います。
重症を除いて、GINAガイドラインが示すように、それほど多くの薬を使用しなくても十分コントロールできるのではないかと考えます。

セレベント併用の有用性を示す報告

吸入ステロイド薬にセレベントを併用することの有用性を示す報告を以下に示します。
Condemiら 吸入ステロイド薬を倍量に増やすよりも、吸入ステロイド薬の量を変えることなくセレベントを併用する方がピークフロー値は上昇した。
Daviesら  吸入ステロイド薬にテオフィリン薬を併用するよりも、セレベントを併用する方がピークフロー値は上昇した。
Nelsonら  吸入ステロイド薬にモンテルカスト(ロイコトリエン受容体拮抗薬=シングレア)を併用するよりも、セレベントを併用する方がピークフロー値は上昇した。




セレベントの治療効果

2003年3月にセレベントの調査をしましたので、その結果を示します。
セレベントを併用していなかった1年間とセレベントを併用して1年間の治療効果を54名の症例で調査しましたが、治療効果は臨床症状、夜間症状、ピークフロー値の3項目で検討しました。

効果 臨床症状
(54名)
夜間症状
(22名)
PEF値
(35名)
 著明改善 21名
(38.9%)
14名
(63.6%)
 改善 21名
(38.9%)
5名
(22.7%)
28名
(80.0%)
 やや改善 10名
(18.5%)
2名
(9.1%)
 不変 2名
(3.7%)
1名
(4.6%)
7名
(20.0%)
 改善率 77.8% 86.3% 80.0%
以上のように、セレベントの導入によって、多くの患者さんで、臨床症状の改善、夜間症状の改善、ピークフロー値の改善が見られ、セレベントの併用は優れた治療効果をもたらしました。



また、発作あるいは呼吸困難で予定外に受診した予定外受診の回数についても調査しましたが、セレベント導入により予定外の受診回数は、下図に示すように著明に減少しています。
予定外受診の総計は、セレベント導入前1年間では474回でしたが、セレベント導入後1年間では190回と約60%減少しています。



昼夜ともに症状が無かった日をSymptom-free dayといいますが、セレベント導入前1年間では約5日でしたが、セレベント導入後1年間では約17日に増えています。さらに、使用期間が長くなるにしたがって昼夜無症状である日数が増えていく傾向が統計学的に認められました。
なお、Symptom-free dayは海外の医療経済表かで頻繁に用いられるものです。
この結果から、セレベントの有用性が十分おわかりいただけるのではないかと思います。

吸入ステロイド薬にセレベントを使用すると、短時間作用型吸入β2刺激薬の使用量が減ることが知られていますが、当院の調査結果でも1年間で38%減少していました。
当初、セレベントを使用するにあたって、同じ吸入β
2刺激薬であると言うことで十分観察して慎重に使いましたが、とくに問題になるようなことはまったくありませんでした。
セレベントの導入によって併用していた薬剤はいずれも減少し、その薬剤料は削減されております。特に、ロイコトリエン受容体拮抗薬の減少は著明でした。


上記54名の患者さんでセレベントを導入して約半年後についてアンケート調査を実施しましたが、結果は以下のとおりでした。

セレベントに関するアンケート調査



以上のアンケート調査の結果から、セレベントが患者さんから非常に良い印象を持たれていることが分かると思います。
実際、セレベントが
患者さんにこれほど反響があるとは想像していませんでした。すなわち、セレベントはその高い治療効果から、多くの患者さんにとってかなり満足感の得られる薬剤ではないかと考えています。
また、吸入することを面倒と思っている患者さんが非常に少なかった理由としては、吸入ステロイド薬ですでに吸入することに慣れるていることが大きな要因としてあげられます。また、多くの患者さんは治療効果が高い薬であれば、吸入薬でも面倒と思わないで使用されるのではないかと思います。



セレベントの副作用

セレベントは非常に副作用が少なく安全性の高い薬です。
セレベントはβ
2刺激薬で問題となる動悸、手のふるえ、筋肉のツレといった副作用が非常に少ない薬です。参考までに臨床試験での主な副作用の発現状況(成人)を記載します。

 心悸亢進 1.8%  咽頭異和感 0.3%
 振戦 0.9%  咽頭痛 0.3%
  0.6%  血圧上昇 0.2%
 頭痛 0.4%  悪心 0.2%
 脈拍増加 0.3%  胸痛 0.2%

副作用ではβ2刺激薬で良く見られる心悸亢進、振戦が問題になリますが、セレベントはそれが非常に少ない薬であるといえます。
私の使用経験でも、心悸亢進、振戦が出現した患者さんはほとんどありませんでした。
経口β
2刺激薬(メプチン,スピロペントなど)や貼付β2刺激薬(ホクナリンテープ)を使用すると動悸、手のふるえが出現するため使用できなかった患者さんにセレベントを投与しましたが、セレベントでは動悸や手のふるえは見られませんでした。
また、嗄声などの局所的副作用も吸入ステロイド薬に比較するとほとんどないようです。
ごく一部で筋肉のツレ(とくに下腿)があるという方もあるようですが、私自身は多くの患者さんで使用してきましたが、ほとんど経験していません。ただ、セレベントに同じ長時間作用性β2刺激薬(ホクナリンテープやメプチン錠)などを併用すると筋肉のツレは起こりやすくなると思います。そのため、当院ではセレベントとホクナリンテープやメプチン錠などを併用しないようにしています。




短時間作用性吸入β2刺激薬との併用は問題はないか?

短時間作用性吸入β2刺激薬(発作止めの吸入薬)を使用している患者さんに長時間作用性とはいえ同じ吸入β2刺激薬を使用しても危険ではないのかという疑問をもたれている方は少なくないと思いますが、何ら問題ないと考えます。
とくに、コントロールが不良で短時間作用性吸入β
2刺激薬を頻繁に使われる患者さんでは心配されると思いますが、私自身は、むしろセレベントを使用して短時間作用性吸入β2刺激薬の使用回数を減らすことが大切だと考えます。
短時間作用性吸入β2刺激薬を過剰に使用していると気道の過敏性が亢進して喘息が悪化すると言われています。したがって、GINAガイドラインでは短時間作用性吸入β2刺激薬の使用は1日3〜4回までとしています。一方、長時間作用性吸入β2刺激薬(セレベント)は、長期に使用しても気道の過敏性は亢進しないと言われていますので、セレベントを使用して短時間作用性吸入β2刺激薬の使用回数を減らすことが大切だと考えます。
当院では基本的にほぼすべての患者さんに吸入ステロイド薬を使用します。
吸入ステロイド薬でコントロールが不良な場合、あるいは、吸入ステロイド薬だけでコントロール不良が予測される場合には
セレベントを併用しています。
発作があれば、セレベントを使用していても
短時間作用性吸入β2刺激薬を使用しても良いというように指導していますが、問題があった患者さんは現在のところ1例もありません。
なお、当院では吸入ステロイド薬、長時間作用性吸入β2刺激薬(セレベント)、短時間作用性吸入β2刺激薬(サルタノール、メプチンエアーなど)を治療の基本にしており、テオフィリン徐放性製剤(テオドールなど)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン、アコレート、トシングレア、キプレス)、 経口β2刺激薬(メプチン,スピロペントなど)や貼付β2刺激薬(ホクナリンテープ)などはそれほど多くは使っていません。

いずれにしても、セレベントを使用していて短時間作用性吸入β2刺激薬を使用することには問題ないと考えます。ただし、長時間作用性β2刺激薬の併用、すなよわち、セレベントを使い、さらに経口β2刺激薬(メプチン、スピロペントなど)や貼付β2刺激薬(ホクナリンテープ)も使うということは避けるようにしています。


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