軽症喘息の治療


軽症喘息の占める割合は多い!

喘息の重症度は軽症間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型の4段階に分けられます。当然のことながら軽症と重症では症状も大きく違いますし、治療も大きく違います。
しかしながら、喘息ということになるとすべての患者さんが横一線であるかのような印象を持たれていることがしばしばあります。そして、一般に喘息に関するサイトでは中等症持続型、重症持続型を中心に展開されているような気がします。
比率的には軽症間欠型(治療ステップ1)、軽症持続型(治療ステップ2)が
全体の70%以上を占めているというのが現実で、喘息患者が2,000万人(日本:400〜500万人、世界:3〜4億人)いるといわれるアメリカでも大部分は軽症間欠型、軽症持続型といわれています。
そこで、喘息では最も多くを占める軽症間欠型、軽症持続型の軽症喘息の治療についてまとめました。



軽症喘息とは?


喘息では重症度を決定し、その重症度に基づいて治療を選択するのが基本です。それを一括して示してあるのがガイドラインの段階的薬物療法です。
重症度は症状、ピークフローなどの肺機能検査、そして現在の治療レベルから判定します。もちろん、状況によって重症度は変化しますので、いつも一緒というわけではありません。重症度決定の基準は下記の通りです。


喘息の重症度

喘息予防・管理ガイドライン2009(日本アレルギー学会)


重症度1) 軽症間欠型 軽症持続型 中等症持続型 重症持続型
喘息
症状の
特徴
頻度 週1回未満 週1回以上だ毎日ではない 毎日 毎日
強度 症状は
軽度で短い
月1回以上
日常生活や睡眠が妨げられる
週1回以上
日常生活や睡眠が妨げられる
日常生活に
制限
短時間作用性吸入β2刺激薬頓用がほとんど毎日必要 治療下でもしばしば増悪
夜間症状 月に2回未満 月2回以上 週1回以上 しばしば
PEF
FEV1.02)
%FEV1.0
%PEF
80%以上 80%以上 60%以上
80%未満
60%未満
変動 20%未満 20〜30% 30%を超える 30%を超える

1)
いずれか1つが認められればそのステップと判断する。
2) 症状からの判断は重症例や長期罹患例で重症度を過小に評価する場合があります。呼吸機能は気道狭窄の程度を客観的に示し、その変動は気道過敏性と関連する。FEV1.0=(FEV1.0測定値/FEV1.0予測値)×100、%PEF=(PEF測定値/PEF予測値または自己最高値)×100
以上のように、喘息の重症度は症状、肺機能から判定しますが、さらに現在の治療レベルから総合的に判定します。なお、重症度は経過によって変化するということを認識しておかねばなりません。
喘息の重症度の比率に関する報告はほとんどありませんが、当院の受診状況では、成人で
軽症間欠型が35%強、軽症持続型が35%強、中等症持続型が25%弱、重症持続型が5%くらいではないか思っています。
治療にあたっては、まず、重症度を決定し、その重症度に応じた治療が望まれます。当然のことながら、重症度によって治療は異なることになります。


CareNetという会社が2004年内科系医師501名に行った調査では、軽症間欠型34.4%、軽症持続型35.3%、中等症持続型24.0%、重症持続型6.3%となっており、軽症が全体の69.7%となっております。
このような事実を考慮すると軽症の患者さんをどのように治療するかということは非常に大切なことになります。ところが、喘息関連のサイトでは、治療に反応しにくい、あるいは治りにくい中等症持続型、重症持続型に重点がおかれている傾向にあります。したがって、軽症の喘息の患者さんでは喘息関連サイトが利用しにくい面があります。
なお、中等症持続型、重症持続型では、治療により軽症間欠型(治療ステップ1)の状態にするのが目標となります。
2005年に行われた喘息患者実態電話調査(AIRJ:足立満ほか)ではステップ1、(軽症間欠型)が62.5%、ステップ2(軽症持続型)が11.3%、ステップ3(中等症持続型)が8.5%、ステップ4(重症持続型)が17.7%となっており、軽症間欠型が非常に多くを占めています。







軽症喘息の治療


軽症喘息の治療は中等症、重症に比較すると薬の使用種類や使用量が少なくても十分コントロールが可能になるのが特徴です。下記に軽症におけるガイドラインを示しまいず、それほど多くの薬を使用しなくてもコントロールできるのが軽症ということになります。そして、喘息では軽症の患者さんが非常に多いということを認識しておくべきだと思います。


喘息予防・管理ガイドライン2009 (成人)
(日本アレルギー学会研究班




治療ステップ1 治療ステップ2
















吸入ステロイド薬
(低用量)
吸入ステロイド薬
(低〜中用量)

上記が使用できない場合以下のいずれかを用いる

 LTRA

 テオフィリン
    徐放製剤



(症状が稀であれば必要なし)

上記で不十分な場合に以下いずれか、1剤を併用

 LABA
 (配合剤の使用可)
 LTRA

 テオフィリン
    徐放製剤
追加
治療
LTRA以外の
抗アレルギー薬
LTRA以外の
抗アレルギー薬
作治療 吸入SABA 吸入SABA
    LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬   LABA:長時間作用性β2刺激薬
     SABA:短時間作用性β
2刺激薬

治療ステップ1(軽症間欠型相当)は吸入ステロイド薬(低用量)、を使用するのが原則となっていますが、吸入ステロイド薬が使用できない場合はロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤のいずれかを用いるとなっています。ただし、症状が稀であれば必要なしとも記載されています。なお、吸入ステロイド薬は世界的なGINAガイドラインでは必要なしとなっています。
私のところでは、治療ステップ1(軽症間欠型相当)でも多くの患者さんで
吸入ステロイド薬を一定期間使用するようにしています。
治療ステップ2(軽症持続型相当)では、軽症であるとはいえある程度の気道の炎症が持続していると観点から吸入ステロイド薬が第一選択薬となります。そして、吸入ステロイド薬で不十分な場合には、LABA(長時間作用性β2刺激薬LABA:吸入/貼付/経口) 、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤 いずれか1剤を併用するとなっています。なお、LABAを併用する場合、吸入ステロイド薬と吸入LABAの配合剤(アドエア、シムビコート)が使用可となっています。
このようにガイドラインでは軽症喘息において、吸入ステロイド薬にいずれか一つを併用するということで、決して、複数の薬剤を併用することをすすめておりません。
私自身の考え方では、治療ステップ2(軽症持続型相当)では、吸入ステロイド薬を適正に使用すれば、長時間作用性β2刺激薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬テオフィリン徐放製剤などを継続して併用する必要性は非常に少ないと考えています。
実際に治療上で大切なことは吸入ステロイド薬の使用で、治療ステップ2(軽症持続型相当)の大部分は
吸入ステロイド薬のみの使用で十分コントロールできると思っています。
当院では軽症喘息において、最初は合剤を使用し、症状が安定したら早めに吸入ステロイド薬単独に変更することも行っています。

軽症喘息では吸入ステロイド薬を使わずにコントロールできる場合がないわけではありませんが、多くは吸入ステロイド薬を使用しないとコントロール不良になりますので、私は
吸入ステロイド薬を積極的に使うべきであると思います
以上から、軽症喘息ではシンプルな治療でほとんどコントロールできるのが特徴で、そういう患者さんが全体の70%いるということです。
問題は残りの中等症持続型、重症持続型で、軽症に比較すると簡単にコントロールできない部分があり、喘息ではこの治療が問題となるわけです。喘息関連のサイトを良く利用される患者さんは中等症持続型、重症持続型の方が多く、どうしても、サイトの内容が中等症持続型、重症持続型を中心としたものになっているのが現実です。

喘息では、軽症のうちに治療するという考え方もありますので、軽症とくに軽症持続型の治療は大変重要と考えます。
吸入ステロイド薬を使用する理由は気道の炎症を抑えて病状をコントロールするという観点から非常に重要な基本的治療になります。軽症喘息の大部分は吸入ステロイド薬のみでコントロールでき、あまり他の薬は必要ないというのが私の考えです。
軽症喘息ではシンプルな治療で十分な効果を上げられると考えています。


軽症喘息における各吸入ステロイド薬の用量(成人)

一般に軽症喘息では、吸入ステロイド薬は低用量を使用しますが、ただし、治療ステップ2ではまれに、中用量を使用することもあります。
以下に各吸入ステロイド薬別の用量を示します。

なお、パルミコートの用量はキュバール、フルタイドの2倍量となっていますが、実際には、同量もしくは1.2〜1.5倍量で同等の効果をあらわすといわれています。
合剤は治療ステップ1では必要なく、治療ステップ2で使用することがありますが、一般的には低用量を使用します。しかし、コントロールの状況によってまれに中用量を使用することもあります。

吸入ステロイド薬

商品名
キュバール オルベスコ フルタイド
パルミコート
低用量 100〜200 100〜200 100〜200 200〜400
中用量 200〜400
200〜400 100〜400
400〜800
                                     (1日使用量::単位μg)

吸入ステロイド薬+LABA合剤

商品名 アドエア シムビコート
低用量 200 2吸入
中用量 500 4吸入

アドエアは低用量では100μg×2/日、中用量では250×2/日と剤型を変えて使用しますが、シムビコートは同じ剤型で低用量は1吸入×2/日、中用量は2吸入×2/日というように使用します。


軽症でもきちんと治療を続ける!

軽症だから治療はそれほどきちんと行なわなくても良いのでは思われる方があるかもしれません。しかし、軽症であっても気道に炎症が起こっていること、軽症できちんと治療を行なわないうちに中等症や重症に移行することがあること、軽症でも突然喘息が悪化することもあるなどの理由から、たとえ軽症であってもきちんとした治療を続けるべきだと思います。
軽症では治療に反応しやすく、治療により経過が極めて良好となることが多くあります。
軽症喘息における吸入ステロイド薬の治療効果は大きく、無症状となるケースは非常に多く見られます。したがって、軽症喘息では
きちんと吸入ステロイド薬を使用して、病状を安定させることが最大のポイントとなります。
しかし、経過が極めて良好になると患者さんが自分の判断で吸入ステロイド薬を中止してしまうということが良くあります。そのため、再び悪化するケースがしばしば見られます。
吸入ステロイド薬は症状が改善しても続けるのが原則で、中止はあくまで慎重に行うべきで、主治医の先生と相談して決めることが望まれます。
なお、治療ステップ3(中等症持続型)、治療ステップ4(重症持続型)の大部分は吸入ステロイド薬を中止することはなかなか困難ですが、軽症喘息では中止することができる患者さんもあります。そんな場合、どのように中止するかということですが、吸入ステロイド薬を使用して全く症状がない状態が1年間続けば、中止しても良いのではないかと私は考えます。しかし、これは、あくまで私の経験からの見解で、患者さんごとでケースバイケースだと思います。
いずれにしても、
たとえ軽症であってもきちんと治療することが望まれます。軽症喘息の場合、軽症だから吸入ステロイド薬を使わなくても良いのではと思われる患者さんもあると思いますが、私自身は喘息の病態を考えると、たとえ軽症でもきちん吸入ステロイド薬(低〜中用量)を使用すべきではないかと考えます。



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