喘息の症状と診断




喘息では本当に喘息なのかどうかということが重要となります。一般に症状と診察所見、簡単な肺機能検査で診断は可能と思われますが、中にはなかなか喘息かどうかの診断がしにくい場合もあります。
そこで、喘息ではどんな症状があり、どのように診断するのかについて簡単にまとめました。

  喘息の症状

1) 喘鳴:胸が゛ゼーゼー、ヒューヒューという
2) 咳(咳込む:夜間、早朝に出やすい)
3) 息苦しさ
4) 呼吸困難(発作性の呼吸困難:夜間、早朝に出やすい)(反復する)
5) 運動した後に息苦しい
6) その他:胸部圧迫感、胸痛など




喘息の多くは症状のみでほぼ診断が可能です。 しかし、発病初期で呼吸困難や喘鳴を認めない軽い状態では診断するのが難しい時もあります。
医療機関を受診した時には、ゼーゼー、ヒューヒューがあるか、呼吸困難があるか、咳や呼吸困難などの症状が夜間や早朝にあるかなどを先生にお話されると良いと思います。

喘息かどうかわからない方は、下の表を参考にしていただくと良いと思います。


あなたの喘息度は?(喘息度チェック!)

当てはまるところの点数を合計してください
3点 ゼーゼー、ヒューヒューしていたといわれたことがある
3点 昼間より夜間や明け方に咳込む
3点 息苦しくて横になれないことがある
2点 走ったときに咳込む
2点 疲れやストレスがたまっているときに息苦しくなる
2点 かぜを引くたびに、2週間以上咳込む
2点 タバコの煙で息苦しくなる
2点 古い雑誌や新聞を片付けていると咳込む
1点 アレルギー性鼻炎や花粉症がある
1点 強い香水や匂いで息苦しくなる
1点 家族にアレルギー体質の人がいる
合計                          

インフォームドコンセントのための図説シリーズ 喘息 (監修:足立満)
     気管支喘息の診断と重症度判定 佐野靖之 より

喘息かどうかわかっていない方では、5点以上なら喘息の可能性が高いと考えられます。



  喘息の診断

1)症状




喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)、咳、息切れ、呼吸困難、胸部圧迫感、胸痛など。とくに夜間、早朝に症状が出現し、無症状な時期をはさんで反復する。
喘息では症状からある程度診断できることもあり、症状は喘息の診断において非常に重要になります。

2)家族歴など 家族(とくに両親、兄弟)に喘息があったり、ご自身がアレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎を合併している場合は、アレルギー素因ありということで診断の参考にします。

3)診察所見 聴診によるwheeze(笛声音)の聴取(とくに呼気時)
聴診では呼気の聴診が重要となります。したがって、診察時に大きく息をするときは吸気よりも呼気を強くするようにすると良いと思います。

通常の呼吸でwheezeが聴取されない場合、強制呼出といって患者さんに力強く息を吐いたてもらって聴診することがありますが、この強制呼出でwheezeが聴取されたら喘息と考えられます。

4)検査 1) 胸部X線
肺や心臓の病気がないかを確認します。
喘息では胸部X線写真で特有な所見はありませんので、心臓肥大や肺に異常な影がないかを見ます。

2) 肺機能検査

1秒量、1秒率
喘息の呼吸機能検査では1秒量、1秒率率が低下するのが特徴です。簡単な呼吸機能検査では肺活量と1秒量を測定しますが、喘息は閉塞性障害の所見(肺活量は正常で1秒量が低下する)のが特徴です。

ピークフロー(PEF)
ピークフローは肺機能検査の1秒量の約1/5の数値を示し、簡単な器具で自宅で行なうことができ、その数値によって喘息の状態を知ることができ、喘息の自己管理に有用です。

フローボリューム曲線
肺機能検査では肺活量や1秒量などを測定する強制呼出曲線とともにフローボリューム曲線という検査も同時に行なうことがあります。フローボリューム曲線では曲線の描くパターンが喘息の診断に有用となります。



肺機能検査器具(スパイロメトリー)

3) 血液検査

末梢血の好酸球
喘息の患者さんでは血液中の好酸球増多が見られる場合がかなりあります。中には正常の患者さんもありますので、血液中の好酸球が多いということだけで喘息と診断できるわけではありませんが、気道炎症の存在を示唆します。

IgE検査
IgE検査にはIgEの総量を調べるIgE(RIST)とアレルゲン特異的IgE抗体を調べるIgE(RAST)があります。RISTで上昇が見られれば喘息の補助診断になりえます。ハウスダスト、ダニ、動物の毛などのアレルゲンを調べるのはIgE(RAST)で行ないます。

4) 喀痰検査

喀痰中好酸球
喘息では喀痰中に好酸球増多を認めます。これは、気道炎症を示唆する所見として末梢血の好酸球増多より信頼度は高く、非常に有用な検査になりますが、一般には専門医療機関を除いてあまり行なわれていないのが現状です。

誘発喀痰検査
患者さんに一定濃度の生理的食塩水を吸入してもらって喀痰のの排出を促し、喀痰中の好酸球を調べる検査で喀痰中好酸球増多をより正確に調べることが出来ます。
喀出される痰の時期を早期相、中期相、遅発相に分けて好酸球を調べることによって、炎症部位がある程度判断できます。早期相は中枢気道を反映し、遅発相は末梢気道を反映するとされており、末梢気道病変の診断に有用です。この検査も専門医療機関を除いてあまり行なわれません。

5) その他

気道可逆性試験
短時間作用性吸入β2刺激薬(べネトリン吸入液、メプチン吸入液、サルタノールインヘラー、メプチンエアーなど)の吸入前後に肺機能を行なうことによって気道の可逆性を見る検査です。最初に肺機能検査を実施し、その後、短時間作用性吸入β2刺激薬を吸入し、15〜30分後に再度肺機能検査を実施します。短時間作用性吸入β2刺激薬を吸入した後に1秒量が12%増加かつ絶対量で200ml以上増加する場合、有意に可逆性がある判定します。可逆性があるということは喘息の可能性が高く、喘息の診断に非常に有用な検査です。

気道過敏性試験
喘息では気道の過敏性が亢進しますが、喘息では健常者では気道が全く反応しない程度の刺激によっても気道収縮が起きるため、アセチルコリン、メサコリンあるいはヒスタミンなどの気管支収縮薬を2分間吸入して、1秒量を20%低下させる濃度を測定し、気道過敏性を評価します。また、メサコリンを自動的に濃度を変えて吸入し、呼吸抵抗が上昇する薬剤濃度で評価する方法もあります。
気道過敏性試験装置は機器が高額ということもあり、呼吸器専門病院以外ではほとんど行なっていないのが現状です。

呼気中一酸化窒素(呼気NO)
呼気中の一酸化窒素(NO)測定は気道炎症の評価に有用とされており、その上昇は気道炎症を示すとされています。「息を吸ってから10秒間吐くだけ」と患者さんへの負担も少なく、喘息の診断、治療反応性の有無、治療のモニタリングに活用でき.るため、かなりの病院で使用されるようになりました。

呼気NO測定器械
ナイオックスVERO(チェスト社)

インパルスオシロメトリー(IOS)
普通の呼吸をするだけという患者さんに負担が少ない検査で、末梢気道炎症を評価するのに有用とされています。この機器も高額で、呼吸器専門病院以外ではほとんど行なっていないのが現状です。

胸部CT
高分解能CTによって末梢気道の状態を知ることが出来ます。

血清ECP値
気道炎症の評価法の一つにあげられています。




成人喘息での診断の目安、鑑別すべき疾患として喘息予防・管理ガイドライン2015では下記のようにまとめられています。

喘息診断の目安


1.発作性の呼吸困難、喘鳴、胸苦しさ、咳(夜間、早朝に出現しやすい)
  の反復
2.可逆性気流制限
3.気道過敏性の亢進
4.アトピー素因の存在
5.気道炎症の存在
6.他疾患の除外

  ・上記の1,2,3,6が重要である。
  ・4,5の存在は症状とともに喘息の診断支持する。
  ・5は通常、好酸球性である。
                 (喘息予防・管理ガイドライン2015)

鑑別すべき疾患


1.上気道疾患:喉頭炎、喉頭蓋炎、vocal cord dysfunction(VCD)、
   声帯機能不全症
2.中枢気道疾患:気道内腫瘍、気道異物、気管軟化症、気管支結核
3.気管支〜肺胞領域の疾患:COPD
4.循環器疾患:うっ血性心不全、肺血栓塞栓症
5.薬剤:アンジオテンシン変換酵素阻害薬などの薬物による咳
6.その他:自然気胸、過換気症候群、心因性咳嗽





付)
喘息とCOPDの鑑別

喘息と鑑別すべき疾患としてCOPD(慢性閉塞性肺疾患:chronic obstructive pulmonary disease)があります。
2004年のNICE Studyによる報告では、COPDの患者数は40歳以上では推計約530万人、70歳以上では推計約210万人いるとされており、現在では約700万人と推計されています。なお、65歳以上の喘息患者の20〜30%でCOPDを合併しているといわれています。

喘息は
「臨床的には繰り返し起こる咳、喘鳴、呼吸困難、生理学的には
可逆性の気道狭窄と気道過敏性の亢進が特徴的で、気道過敏なほど喘息症状が著しい傾向がある。組織学的にはで好酸球、リンパ球、マスト細胞などの浸潤と、気道上皮の剥離を伴う慢性の気道炎症が特徴的である。免疫学的には多くの患者で環境アレルゲンに対するIgE抗体が存在する。長期罹病患者では、気道上皮基底膜直下線維化、平滑筋肥厚、粘膜下腺形成などからなる気道のリモデリングが見られ、非可逆的な気流制限と持続的な気道過敏性の亢進をもたらし、喘息が難治化する原因になると考えられる。」と定義されている。(喘息予防管理ガイドライン2009より抜粋)

一方、COPDは
タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患である。呼吸機能検査で正常に復することのない気道閉塞を示す。気道閉塞は末梢気道病変と気腫性病変が様々な割合で複合的に作用することにより起こり、進行性である。臨床的には徐々に生じる体動時の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とする。」と定義されています。(COPD診断と治療のためのガイドライン第3版:2009)

                     喘息とCOPDの鑑別

喘息 COPD
発症年齢 全年齢層 中高年層
要因 アレルギー、感染 喫煙、大気汚染
アレルギー歴、家族歴 −〜+
炎症の部位 気道 気道、肺胞、血管
気道炎症に
関与する細胞
好酸球
マスト細胞
CD4陽性Tリンパ球
好中球
マクロファージ
CD8陽性Tリンパ球
症状 持続性 日内変動
(夜間・早朝)
進行性
出現形態 発作性 労作性
気道閉塞の可逆性 −(〜+)
気道過敏性 −(〜+)
気道上皮剥離 +++
肺胞の破壊・拡大 +++
肺血管内膜・平滑筋の肥厚、壁の線維化 ++
          (COPD診断と治療のためのガイドライン第3版:2009に追加)


     喘息とCOPDの呼吸機能検査
喘息 COPD
 1秒率(FEV1%) 低下(70%以下) 低下(70%以下)
 気道可逆性試験 気管支拡張薬吸入前後に1秒量を測定し、改善の割合を計算
     ↓
改善率が12%以上
改善量が200mL以上
気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリ―で
     ↓
1秒率70%以下

喘息とCOPDは両者が合併していることもあり、診断するのが困難な場合もあります。しかし、喫煙歴や呼吸機能検査、CTなどである程度区別することは可能だと思います。治療の喘息においては吸入ステロイド薬が第一選択薬になりますが、COPDでは主に気管支拡張薬(抗コリン薬、長時間作用性β2刺激薬)が中心的薬剤になります。ただし、病期が進行すれば吸入ステロイド薬を併用することがすすめられています。なお、喘息で使用される吸入ステロイド薬と長時間作用性吸入β2刺激薬の配合剤(アドエア、シムビコート、フルティフォーム、レルベア)では、アドエアディスカス250μg×2/日、アドエアエアゾール125μg×2吸入×2回/日、シムビコート2吸入×2回/日がCOPDの適応症になっています。


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