高齢者喘息




高齢者喘息について記載しますが、高齢者といっても元気な方と元気でない方があったり、合併症があったりなかったりとさまざまで、一概に線引きできない部分がありますが、一般に65歳以上で喘息の方を高齢者喘息としています。

  高齢者喘息の特徴および問題点

最初に高齢者喘息の特徴や問題点について簡単にまとめてみました。

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罹病期間が長い例が多く、顕著な呼吸機能低下が見られる例が多い。
気道の可逆性が不十分で日常的に症状があることが多い。症状が出現しやすい。
重症化に伴う呼吸機能低下が著しい。
末梢気道病変が強い

COPD(慢性閉塞性肺疾患)、心疾患など他の疾患を合併する例が多い。
成人喘息に比較して薬物療法の効果が乏しい。
高齢者は理解力が低下している。(個人差がある)

吸入の導入に際し、高齢者は薬を吸入するということに慣れていないため、戸惑い、違和感、躊躇が見られる。
高齢者では吸入手技がなかなか覚えられないため、吸入指導に時間がかかることが多い。
高齢者は動作が緩慢なことが多く、で吸入操作がスムーズに行えないことが多い。
高齢者は吸う力が弱い。手指の力が弱い。

吸気流速が低下(吸う力が弱い)している患者がいる。
高齢者では吸入ステロイド薬の変更を嫌がることが多い。
高齢者では吸入ステロイド薬による局所的副作用が出現しやすい。

喘息死亡患者の90%は60歳以上の高齢者である。





  診断

症状は、高齢者でも反復性の呼吸困難発作、喘鳴、咳発作など一般の成人喘息と同様です。しかし、若年者と比べると寛解期の症状や肺機能の改善が完全でないことが多いのが特徴でする
一般的に、高齢者喘息でも喘息の診断は比較的容易ですが、症状が軽い場合や合併症がある場合は診断が困難なことがあります。
高齢者ではCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、心不全、逆流性食道炎などの鑑別すべき疾患や合併症が多く診断しにくい場合がたびたびあります。その他にも高齢者に多い肺癌、肺結核なども鑑別する必要があります。
なかでも心不全との鑑別は重要で、呼吸困難が起座位で軽快する場合は心不全であることが多く、喀痰などの排出により軽快する場合は喘息の可能性が高いとされています。
心不全と鑑別する方法としてBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)値の測定が有用とされています。なお、うっ血性心不全では胸部X線写真で心拡大、肺うっ血像を認め、超音波検査で心機能低下がみられます。





  治療


高齢者喘息でも治療は基本的に成人喘息と同じで、ガイドラインにも示されているように吸入ステロイド薬を基本に必要に応じて気管支拡張薬などを併用します。
高齢者喘息でも吸入ステロイド薬が治療の第一選択薬になりますし、その継続使用が大変重要になります。
以下、高齢者喘息で使用する薬剤について説明します。



 (1) 吸入ステロイド薬

高齢者喘息でも吸入ステロイド薬が治療の
第一選択薬になります。高齢者の場合は、とくに適切なデバイス(吸入 器具)の選択が重要となります。吸入ステロイド薬は以下のようなことに注意して選択、使用します。

吸入手技
高齢者では理解力低下、動作が緩慢、手指の力が弱いなどの問題があり、吸入手技が未熟なことが多くあります。しかし、マスターするときちんと吸入されますので、丁寧に、根気よく、繰り返し、熱心な指導をすることが重要となります。
ちなみに、当院で調査したところ吸入ステロイド薬の定期的使用の遵守率が最も高かったのは高齢者でした。すなわち、熱心な指導で吸入をマスターしてもらって定期的に使用することが大切なことなのです。

なお、麻痺や関節変形などのために手に障害がある場合や、認知症がある場合などは、家族に十分な説明をして理解してもらい、吸入主義の一部を介助してもらうようにします。
また、エアゾール製剤を吸入するとき、高齢者では同庁が必要なく、自分のペースでゆっくり吸えるスペーサーを用いる方が良い(とくにフルタイドエアー、アドエアエアー)と考えます。
吸気流速低下
高齢者では吸気流速が低下している(吸う力が弱い)ことがあり、その場合ははドライパウダー製剤がうまく吸えないことがありますので注意を要します。
うまく吸入できない場合は、吸気流速が低下していも吸入が可能なエアゾール製剤を使用ないしエアゾール製剤に変更します。
ただし、ドライパウダー製剤でもアズマネックスは吸気流速が低下していも吸入が可能と思われます。
用量
高齢者では吸入ステロイド薬を高用量で長期に使用すると全身への影響が懸念されますので、必要以上に高用量を漫然と使用しないことが重要です。重症で高用量を使用した場合でも、症状が安定すれば中用量にステップダウンすることが大切だと考えす。
局所的副作用
高齢者では局所的副作用の出現率が出現率が高くなります。とくに、高齢者では年齢ととも嗄声の出現頻度が高くなります。なかでもドライパウダー製剤では嗄声の出現率が高くなりますので、ドライパウダー製剤を使用していて嗄声が出現したら、嗄声の出現率が低いエアゾールセ製剤への変更が望まれます。それによって多くの患者さんで嗄声は改善ないし消失することがあります。嗄声は服薬アドヒアランスを低下させますので、嗄声に注意しながら適切な対応をする子どが重要です。
末梢気道炎症
高齢者では末梢気道病変が強いのではないかといわれています。末梢気道炎症を確認するには一般的には困難ですが、末梢気道炎症の存在が疑われた場合は粒子径が小さく末梢気道まで送達される超微粒子の吸入ステロイド薬(キュバール、オルべスコ)を使うべきと考えます。
降る態度など粒子径の大きい吸入ステロイド薬から超微粒子の吸入ステロイド薬に変更すると症状が改善することがしばしば見られますが、これは末梢気道改善効果によるものと考えられます。
最近では、キュバール、オルべスコより粒子径がやや大きいですが、ドライパウダー製剤では一番か粒子径が小さく末梢にも薬剤が送達されると考えられるアズマネっクスが発売されていますので、アズマネックスを使用するのも一つの方法になります。

吸気流速低下、局所的副作用、末梢気道炎症などを考慮すると、高齢者には超微粒子のpMDI(エアゾール製剤:キュパール、オルベスコ)やpMDIで肺内到達に適した範囲の粒子が吸入できるフルティフォームが適していると思われますが、高齢者でもドライパウダー製剤で問題のない患者さんも多く、個々の患者さんごとに最も合ったものを選択することが望まれます。


          
  高齢者ぜんそくと吸入ステロイド薬のまとめ


・ 喘息と診断したら吸入ステロイド薬を積極的に使用する。

・ 高齢者ということで吸入ステロイド薬の導入を諦めない。
・ 吸入ステロイド薬を導入した高齢者の継続率は高い。
 吸入ステロイド薬の必要性などをわかりやすく説明する。
 丁寧に、根気よく、繰り返し吸入指導およびチェックをする。
・ 合併症、身体状況を考慮して適切なディバイスを選択する。
・ ドライパウダー製剤が吸えない例があることに注意する。
・ 操作性の良いディバイス、簡単なディバイスを使用する。
 局所的副作用の少ないデバイスを選択する。
 末梢気道炎症ということも視野に入れながらデバイスを選択する。
・ 高齢者では超微粒子のエアゾール製剤が最も適切である。

・ 全身への影響も考慮して用量設定を行う。
・ エアゾール製剤ではラベルに終了年月日を記載する。


これらの点に注意しながら吸入ステロイド薬を選択ないし変更しますが、詳細については、吸入ステロイド薬の使い方に詳しく記載してありますので、参考にしていいだければと思います。


 (2) β2刺激薬


β2刺激薬は気管支拡張作用があり、若年者ほど効果的ではありませんが、一般的に、発作治療には短時間作用性吸入β2刺激薬(吸入SABA)を使用し、長期管理には長時間作用性吸入β2刺激薬(吸入薬、貼付薬、経口薬)を使用します。
なお、吸入LABAがうまく吸えないときはスペーサーを使用するがネブライザーで吸入液を吸入します。

β2刺激薬の使用によって、動機、手のふるえ、筋肉のツレなどの副作用が出現することがありますので十分観察する必要があります。私の経験では、長時間作用性β2刺激薬におけるそれら副作用は経口薬>貼付薬>吸入薬の順に頻度が高いと考えています。したがって、当院では長時間作用性吸入β2刺激薬をよく使用していますが、吸入がうまくできない患者さんでは貼付薬(圃くナリンテープ)を使用しています。
高齢者ではCOPDを合併している患者さんやβ2刺激薬に反応の乏しい患者さんがあります。そういう場合には抗コリン薬の吸入を併用することもあります。ただし、前立腺肥大症や緑内障を合併する場合は注意が必要とのます。


 (3) テオフィリン薬





高齢者ではクリアランスが低下するためテオフィリンの血中濃度が上昇します。したがって、使用する場合は血中濃度を測定し、5〜10μg/mlを目標とすることが望まれます。とくに、75歳以上では過量投与が喘息死の原因となるとの報告もあるので注意を要します。
テオフィリン薬は胃腸障害、動悸、不整脈、不眠、興奮、頭痛、過敏症状などの副作用が出現が多いこともあり、当院ではあまり使用していませんし、使用しても低用量で使用しています。


 (4) ロイコトリエン受容体拮抗薬

ロイコトリエン受容体拮抗薬(シングレア。キプレス、オノンなど)は中高年を含む成人ぜんそくにおいては有効な薬剤とされ、副作用も軽微であることから高齢者でもその効果が期待されています。


 (5) その他

高齢者ではインフルエンザに罹患すると重症化することがあります。また、高齢者喘息では喘息が著しく悪化することがあります。インフルエンザが大流行したときに喘息死が増えているという報告もあります。したがって、高齢者喘息ではインフルエンザワクチンは積極的に行っておいた方が良いと考えます。
高齢者は肺炎にかかりやすいことがあります。なかでも肺炎球菌による肺炎では呼吸不全で死亡するケースもありますので、肺炎予防のために肺炎球菌ワクチンも行っておいた方が良いと考えます。

以上、高齢者喘息について記載しましたが、基本的には高齢者でも成人喘息と同様の治療を行います。ただ、高齢者では合併症が多かったり廊下による薬物代謝の変化がありますので、注意しながら治療することが大切です。



Athma-COPD Overlap Syndrome,ACOS
(喘息予防・管理ガイドライン2015より)

COPDは、高齢者喘息においては最も鑑別診断に注意を要する疾患であるとともに、合併症としても重要な疾患です。
喘息の病態は中枢から末梢気道の好酸球優位の炎症であり、可逆的な狭窄が特徴です。これに対してCOPDは好中球炎症が優位で、末梢気道の線維化性狭窄病変や肺胞の気腫性変化に代表される特有な構築変化が見られ、これらの末梢気道病変と気腫性病変が複合的に作用して気流閉塞が起きるとされています。以前から喘息にCOPDを合併している患者さんがいることは知られていました。
65歳以上の高齢者における実際の両疾患の合併が
24.7%(18.4〜31.7%)に上るという報告されている。また、喘息とCOPDの合併例(オーバーラップ症候群)として、@呼吸器症状、A気道可逆性、B正常にまで改善しない換気障害、C気道過敏性の壁手が認められることを必須条件とした疫学調査では、高齢者閉塞性肺疾患では約半数以上はオーバーラップ症候群に相当するとの調査結果もあります。こうした患者さんでは増悪の頻度が高く、QOLも低く、呼吸機能の急速な低下を示し、予後の悪いことが推定されています
こうした状況を踏まえて、世界的に、慢性の気流制限もを示す疾患カテゴリーとして、喘息、COPD、に加え、両疾患を塀せて持つ患者群に対して
「喘息COPDオーバーラップ症候群(Asthma-COPD Overlap Syndrome,ACOS)を新たな疾患として呼称し、喘息、COPD、ACOSについての鑑別法が提唱されました。
COPDの薬物治療に関しては、長時間作用性吸入気管支拡張薬が中心となりますが、高齢者のACOSで喘息のコントロールが不十分な場合には、予後の悪化が示されているので、吸入ステロイド薬を基本的に用いて、さらに長時間作用性β
2刺激薬を使用し、場合によっては長時間作用性抗コリン薬咥えて使用することが推奨されています。
一方、COPDの特徴が目立つ患者さんには、吸入ステロイド薬の単独治療は避けて、気管支拡張薬あるいは作用の異なるCOPD治療薬を複合的に用いるべきであることが指摘されています。ACOSの場合、旧なゅうステロイド薬ょを中心として、長時間作用性β2刺激薬や抗コリン薬を併用ことが示されています。
喘息治療における
抗コリン薬の位置づけは明確になっていませんが、近年になって、喘息の患者さんにおいて長時間作用性抗コリン薬が、吸入ステロイド薬への追加投与や、吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬配合剤に対する追加投与でゆうようであるという報告がなされています



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