喘息ガイドライン

   

喘息予防・管理ガイドラインは喘息の予防、管理、治療などについて指針を示したもので、
2015年5月に改定されました。ガイドラインは喘息の予防、管理、治療などについてどのよ
うに対処するのが望ましいかという指針(方向性)を示したものです。


喘息のガイドラインは世界各国で発表されていますが、国際指針として世界的な標準(国際
指針)となっているのは
GINA(Global Initiative for Asthma)ガイドラインです。
わが国にも成人の喘息予防・管理ガイドライン(JGL)と小児の小児気管支喘息治療・管理
ガイドライン(JPGL)
あります。
なお、いずれのガイドラインも数年ごとに改訂されています。



喘息ガイドラインの歴史

喘息ガイドライン公表の歴史
1989年  英国サザンプトン病院のグループによる自己管理指針
1989年  オーストラリア・ニュージーランド胸部疾患学会kの管理プラン
1990年  英国胸部疾患:BTS(British Thoracic Society)ガイドライン
1991年  米国国立衛生研究所(NIH:National Institute of Health)ガイドライン
 カナダ胸部疾患学会ガイドライン
1992年  国際委員会報告:ICR(Intenational Consensus Report)
1993年  日本アレルギー学会:JGL1993 (Japanese Guideline1993)ガイドライン
1995年  WHO:GINA(Global Initiative for Asthma)1995
 (喘息予防・管理国際指針)
1998年  JGL1998
 (厚生省免疫・アレルギー研究班−改訂版)
2000年  JGL2000 (1998改訂版)
 JPGL2000 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2000(日本小児アレル
 ギー学会)
2002年  GINA2002(喘息予防・管理国際指針)
 NIH2002(米国立衛生研究所)
 JPGL2002(日本小児アレルギー学会)
2003年  JGL2003 (1998改訂第2版)
 GINA2003(喘息予防・管理国際指針)
2005年  JPGL2005(日本小児アレルギー学会)
2006年  JGL2006(日本アレルギー学会)
 GINA2006(喘息予防・管理国際指針)
2007年  JGL2007(日本アレルギー学会)
2008年  JPGL2008(日本小児アレルギー学会) 
2009年  JGL2009(日本アレルギー学会)
2011年  JPGL2012(日本小児アレルギー学会)※ 
2012年  JGL2012(日本アレルギー学会)
2015年  JGL2015(日本アレルギー学会)
                            ※本ホームページで掲載しているガイドライン

ガイドラインは喘息死が増加していることを問題視し、世界各国で作成公表 されました。いずれのガイドライントも喘息は気道の炎症と定義し、治療では吸入ステロイド薬を第一選択薬と位置づけ、ピークフローメーターによる自己管理を推奨しています。
喘息治療の国際指針となっているGINAは1995年から発表されていますが、成人・小児ともに吸入ステロイド薬の重要性が強調され、日常長期管理薬(毎日使用するコントローラー)の中心的な薬として位置づけられています。
なお、GINAでは成人の治療ステップ3〜5では、吸入ステロイド薬に
長期間作用性吸入β2刺激薬(=セレベント)の併用(配合剤の使用可)が、日常長期管理薬(毎日使用するコントローラー)の基本となっています。
なお、2006年11月に公表されたGINAガイドライン2006では、大幅な改訂が行われ、「重症度に応じた治療(ステップ1〜4)」から、「コントロールレベルによる治療法(治療ステップ1〜5)へと改変されました。
2009年のJGLガイドライン(日本アレルギー学会)は大幅に改訂され、GINAガイドライン2006と同様に、「重症度に応じた治療(ステップ1〜4)」から、「治療レベルによる治療法(治療ステップ1〜4)」へと改変されました。
同様に2011年のJPGLガイドライン(日本小児アレルギー学会)でも治療ステップ別に変更されました。
全体的にGINAガイドライン(国際指針)、JGLガイドライン(日本アレルギー学会)、JPGLガイドライン(日本小児アレルギー学会)の各ガイドラインが、ある程度統一された内容になってきております。。




喘息ガイドラインの概要

以下にガイドラインの概要を記載します。

   1) 喘息予防・管理ガイドライン2015(JGL2015)
   2) 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012(JPGL:2012)



1) 喘息予防・管理ガイドライン2015
  (日本アレルギー学会)



段階的薬剤投与プラン


喘息治療の目標

喘息治療の目標は、症状や増悪がなく、薬剤の副作用がなく,呼吸機能を正常なレベルに維持することである。しかし、気道リモデリングの影響により、呼吸機能が正常値までは改善しない場合があるので、患者の自己最高値に基づいて判定する。
コントロールの状態を以下の表に基づき判断し、コントロール良好を目指す。


コントロール状態の評価

コントロール良好
(すべての項目が該当)
コントロール不十分
(いずれかの項目が該当)
コントロール不良
喘息症状(日中および夜間) なし 週1回以上 コントロール不十分
の項目が
3つ以上当てはまる
発作治療薬の使用 なし 週1回以上
運動を含む活動制限 なし あり
呼吸機能
(PEF1およびPEF)
予測値あるいは自己最高値の80%以上 予測値あるいは自己最高値の80%未満
PEFの日(週)内変動 20%未満*1 20%以上
増悪 なし 年に1回以上 月に1回以上*2

*1
*2
:1日2回測定による日内変動の正常上限は8%である。
:増悪が月に1回以上あれば他の項目が該当しなくてもコントロール不良と評価する。

「コントロール良好」なら現在の治療の続行あるいは良好な状態が3〜6ヵ月持続していればステップダウンを考慮する。
「コントロール不十分」なら現行の治療ステップを1段階アップする。
「コントロール不良」なら現行の治療ステップを2段階アップする。
喘息治療をその強度から下記の4つの治療ステップに分ける。薬剤治療の目標は最小限の薬剤で最大の効果を得ることである。治療開始時に症状、受診時の症状と治療状況を総合して治療ステップを決定する。

4段階の治療ステップに含まれる主な薬剤は、その作用機序のエビデンスから、それぞれの守備範囲(治療スペクトラム)がイメージできる。各薬剤を併用する際は、このような薬剤の特徴を考慮して選択するのが有用と考える。

主な長期管理薬の効果に関する特徴

気管支拡張 炎症↓ リモデリング↓ 気道分泌↓
 吸入ステロイド薬
 長時間作用性β2刺激薬
 テオフィリン徐放製剤
 ロイコトリエン受容体拮抗薬
 抗IgE抗体
 長時間作用性抗コリン薬
 (チオトロピウムソフトミスト)
ここでは便宜的にスペクトラムの強度を色の濃さで示す



喘息治療ステップ

治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4
































吸入ステロイド薬
(低用量)
吸入ステロイド薬
(低〜中用量)
吸入ステロイド薬
(中〜高用量)
吸入ステロイド薬
(高用量)

上記が使用できない場合以下のいずれかを用いる



 LTRA

 テオフィリン
    徐放製剤


(症状が稀であれば必要なし)

上記で不十分な場合に以下いずれか、1剤を併用

 LABA
(配合剤の使用可*5
 LTRA

 テオフィリン
    徐放製剤

上記に下記のいずれか1剤、あるい
は複数を併用

 LABA
(配合剤の使用可*5
 LTRA

 テオフィリン
    徐放製剤

 LAMA*6

上記に下記の複数を併用
は複数を併用

 LABA
(配合剤の使用可)
 LTRA

 テオフィリン
    徐放製剤
 LAMA*6
 抗
IgE抗体*2,7
 経口ステロイド薬
 *3,7
追加
治療
LTRA以外の
抗アレルギー薬*1
LTRA以外の
抗アレルギー薬*1
LTRA以外の
抗アレルギー薬*1
LTRA以外の
抗アレルギー薬*1
  発作
  治療*4
吸入SABA 吸入SABA*5 吸入SABA*5 吸入SABA
  ICS:吸入ステロイド薬、LABA:長時間作用性β2刺激薬、LAMA:長時間作用性抗コリン薬、
  LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬、SABA:短時間作用性β2刺激薬

*1:
抗アレルギー薬は、メディエーター遊離抑制薬、ヒスタミンH1-拮抗薬、トロンボキサンA2阻害薬、Th2サイトカイン阻害薬を指す。
*2: 通年性吸入抗原に対して陽性かつ血清IgE値が30〜1500IU/mlの場合に適応となる。
*3: 経口ステロイド薬は短期間の間欠投与を原則とする。他の薬剤で治療を強化し、かつ短期間の間欠投与でもコントロールが得られない場合は、必要最小量を維持量とする。
*4: 軽度の発作までの対応を示し、それ以上の発作についてはガイドラインの「急性増悪(発作)への対応(成人)の項を参照。
(当院ホームページ発作時の治療を参照ください)

*5: ブデソニド/ホルモテロール配合剤で長期管理を行っている場合には、同剤を発作治療にも用いることができる。長期管理と発作治療を合わせて1日8吸入までとするが、一時的に1日12吸入まで増量可能である。ただし、1日8吸入がを超える場合は速やかに医療機関を受診するよう患者に説明する。
*6: チオトロピウム臭化物水和物のソフトミスト製剤。
*7: LABA,LTRAなどをICSに加えてもコントロール不良の場合に用いる。


(解説)


喘息予防・管理ガイドライン2015における段階的薬物療法プランは、前回のガイドライン(2012)とほとんど変わっておりません。変わったところはステップ3,4でLAMA(長時間作用性抗コリン薬:チオトロピウム臭化物水和物のソフトミスト製剤。)の併用が追加されたことです。


治療ステップ選択のまとめ:


未治療の患者さん
においては下に示したような症状を目安にして治療ステップを選択します。すなわち、軽症間欠型の症状であれば治療ステップ1、軽症持続型の症状であれば治療ステップ2、中等症持続型の症状であれば治療ステップ3、重症持続型の症状であれば治療ステップ4となります。

現在治療中の患者さんであれば、上に示したコントロール状態の評価を参考にして、コントロール良好なら現在の治療の続行あるいは良好な状態が3〜6tか月持続していればステップダウンを考慮します。コントロール不十分なら現行の治療を1段階アップし、コントロール不良なら現行の治療ステップを2段階アップします。




未治療患者の症状と目安となる治療ステップ

治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ
対象
症状
 
  (軽症間欠型)
    相当

・症状が週1回未満

・症状が軽度で短い

・夜間症状は月に
 2回未満





 
  (軽症持続型)

    相当

・症状が週1回
 以上、しかし
 毎日ではない

・月1回以上日常生
 活や睡眠が妨げ
 られる

・夜間症状は月に
 2回以上

  (中等症持続型)
    相当

・症状が毎日ある

・短時間作用性吸入
 β2刺激薬がほぼ
 毎日必要

・週1回以上日常生
 活や睡眠が妨げ
 られる

・夜間症状が週1回
 以上


  (重症持続型)
    相当

・治療下でもしばしば
 増悪

・症状が毎日ある

・日常生活が制限さ
 れる

・夜間症状がしばし
 ば




喘息の重症度について

患者さんは自身が重症度を知っておくことは大切なことです。そこで、喘息の重症度について、わが国の喘息予防・管理ガイドライン(2009年)に基づいて説明します。

            成人喘息の重症度 (喘息予防・管理ガイドライン2015より) 

(1) 治療前の臨床所見による喘息重症度の分類

重症度*1 軽症間欠型 軽症持続型 中等症持続型 重症持続型
喘息
症状の
特徴
頻度 週1回未満 週1回以上だ毎日ではない 毎日 毎日
強度 症状は
軽度で短い
月1回以上
日常生活や睡眠が妨げられる
週1回以上
日常生活や睡眠が妨げられる
日常生活に
制限
しばしば増悪 しばしば増悪
夜間症状 月に2回未満 月2回以上 週1回以上 しばしば
PEF
FEV1.0*2
%FEV1.0
%PEF
80%以上 80%以上 60%以上
80%未満
60%未満
変動 20%未満 20〜30% 30%を超える 30%を超える
                         肺機能 (PEF:ピークフロー、FEV1.0:1秒率)

*1:
いずれか1つが認められればその重症度と判断する。
*2: 症状からの判断は重症例や長期罹患例で重症度を過小に評価する場合がある。呼吸機能は気道閉塞の程度を客観的に示し、その変動は気道過敏性と関連する。FEV1.0=(FEV1.0測定値/FEV1.0予測値)×100、%PEF=(PEF測定値/PEF予測値または自己最高値)×100

(解説)
以上のように、喘息の重症度は症状、肺機能から判定しますが、さらに現在の治療レベルから総合的に判定します。なお、重症度は経過によって変化するということを認識しておかねばなりません。
喘息の重症度の比率に関する報告はほとんどありませんが、当院の受診状況では、成人で
ステップ1(軽症間欠型)が30%強、ステップ2(軽症持続型)が30%強、ステップ3(中等症持続型)が30%弱、ステップ4(重症持続型)が5%前後くらいではないか思っています。
2005年に行われた喘息患者実態電話調査(AIRJ:足立満ほか)ではステップ1、(軽症間欠型)が62.5%、ステップ2(軽症持続型)が11.3%、ステップ3(中等症持続型)が8.5%、ステップ4(重症持続型)が17.7%となっており
、軽症間欠型が非常に多くを占めています。

治療にあたっては、まず、重症度を決定し、その重症度に応じた治療が望まれます。当然のことながら、重症度によって治療は異なることになります。


治療前の患者さんは「治療前の臨床所見による喘息重症度の分類」を使用し、現在治療中の患者さんは「現在の治療を考慮した喘息重症度の分類」を使用します。



(2) 現在の治療を考慮した喘息重症度の分類

現在の治療における
患者の症状
現在の治療ステップ
ステップ1 ステップ2 ステップ3 ステップ4
コントロールされた状態*1
●症状を認めない
●夜間症状を認めない
軽症
間欠型
軽症
持続型
中等症
持続型
重症
持続型
軽症間欠型相当*2
症状が週1回未満である
症状は軽度で短い
夜間症
状は月に2回未満である
軽症
間欠型
軽症
持続型
中等症
持続型
重症
持続型
軽症持続型相当*3
症状が週1回以上、
  しかし、毎日ではない
月1回以上日常生活や睡眠
  が妨げられる
夜間症状は月2回以上
軽症
持続型
中等症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
中等症持続型相当*3
症状が毎日ある
短時間作用性吸入β2刺激薬
  がほとんど毎日必要 
週1回以上日常生活や睡眠
  が妨げられる
夜間症状が週1回以上ある
中等症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
最重症
持続型
重症持続型相当*3
治療かでもしばしば増悪する
症状が毎日ある
日常生活が制限される
夜間症状がしばしばある
重症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
最重症
持続型

*1:
コントロールされた状態が3〜6か月以上維持されていれば治療のステップダウンを考慮する。
*2: 各治療ステップにおける治療内容を強化する。
*3: 治療のアドヒアランスを確認し、必要に応じ是正して治療をステップアップする。
(解説)
療中の患者さんでは、現在の治療における患者さんの症状と現在の治療ステップから重症度を判定します。たとえば、症状もなくコントロールされた状態であっても、治療ステップが3であれば中等症持続型と判定、治療ステップが2であっても症状が中等症持続型相当であれば重症持続型と判定します。





2) 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン 2012 
(日本小児アレルギー学会)


2011年10月に小児気管支喘息ガイドラインが改訂されましたので、小児気管支喘息ガイドライン2008を小児気管支喘息ガイドライン2012に書き換えました。

小児気管支喘息ガイドライン2012は、従来の小児気管支喘息ガイドライン2008と基本的に著しい変化はありませんが、 今回の改訂では、成人喘息のガイドライン(JGL2009)と同様に「喘息コントロール状態の評価」が新たに記載されました。小児気管支喘息の長期管理に関する薬物療法プランもJGLと同様に重症度別ではなく治療ステップ別になりました。薬物療法プランはJPGL2008と同様に6〜15歳、2〜5歳、2歳未満にわけられていて、内容的には大きな変化はありません。
ずれの薬物療法プランでも、新たに従来適応となっていなかった吸入ステロイド薬が適応になった(パルミコート、オルベスコ)こともあり、吸入ステロイド薬の用量は低用量、中用量、高用量と記載が変更されました。
6〜15歳では、
治療ステップ2の追加治療でテオフィリン徐放製剤が(考慮)になり、ステップ3の追加治療からDSCG(インタール)が削除されました。治療ステップ4の追加治療で高用量SFC(アドエア)が記載されています。
2〜5歳では、
治療ステップ2の基本治療で吸入ステロイド薬(考慮)から(考慮)が削除され、追加治療でテオフィリン徐放製剤が削除されました。ステップ3の追加治療からDSCG(インタール)が削除され、テオフィリン徐放製剤が(考慮)に変更されました。治療ステップ4の基本治療の併用薬からDSCG(インタール)が削除され、SFCに変更が新たに追加されました。追加治療で高用量SFC(アドエア)が記載されています。
2歳未満では、
治療ステップ3の追加治療でDSCG(インタール)、テオフィリン徐放製剤(考慮)が削除されました。治療ステップ4の基本治療の併用薬からDSCG(インタール)が削除されました。
以上が薬物療法プランの変更点ですが、吸入ステロイド薬が中心的治療薬として位置付けられている点で従来通り変化はなく、
DSCG(インタール)、テオフィリン徐放製剤の位置づけが後退いるのが特徴です。


喘息治療の目標

最終的には寛解・治癒を目指すが、日常の治療の目標は
 症状のコントロール  ●β2刺激薬の頓用が減少、または必要がない。
 ●昼夜を通じて症状がない
 呼吸機能の正常化  ●ピークフロー(PEF)やスパイログラムがほぼ正常で安定している。
 ●
気道過敏性が改善し、運動や冷機などによる症状誘発がない。
 QOLの改善  ●スポーツも含め日常生活を普通に行うことができる。
 ●
治療に伴う副作用が見られない。


コントロール状態の評価

評価項目 コントロール状態
良好
(すべての項目が該当)
比較的良好
不良
(いずれかの項目が該当)
:軽微な症状 なし ≧1回/月<1回/週 ≧1回/週
明らかな喘息発作 なし なし ≧1回/月
日常生活真制限 なし なし(あっても軽微) ≧1回/月
β2刺激薬の使用 なし (≧1回/月)<1回/週 ≧1回/週

※1 コントロール状態を最近1ヶ月程度の期間で判定する。
※2 軽微な症状とは、運動や大笑い、啼泣の後や起床時に一過性に見られるがすぐに消失する咳や喘鳴、短時間で覚醒することのない夜間の咳き込みなど、見落とされがちな症状を指す。
※3 明らかな喘息発作とは、咳き込みや喘鳴が昼夜にわたって持続あるいは反復し、呼吸困難を伴う定型的な喘息症状を指す。
※4 可能な限りピークフロー(PEF)やフローボリューム曲線を測定し、「良好」の判定には、PEFの日内変動が20%以内、あるいは自己最良値の80%以上、1秒量(FEV1)が予測値の80%以上、β2刺激薬反応性が12%未満であることが望ましい。
※5 評価に際し、最近1年間の急性増悪による入院や全身性ステロイド薬投与などの重篤発作、あるいは症状の季節性変動など、各患者固有の悪化因子(リスク)を考慮して治療方針決定の参考にする。


現在の治療ステップを考慮した小児気管支喘息の重症度評価

症状のみによる重症度
(見かけ上の重症度)
現在の治療ステップを考慮した重症度(真の重症度)
治療
ステップ1
治療
ステップ2
治療
ステップ3
治療
ステップ4
間欠型
・年に数回、季節性に咳嗽、軽度
 喘鳴が出現する
時に呼吸困難を伴うが、β2刺激
 薬頓用で短期間で症状が改善
 し、持続しない。
間欠型 軽症
持続型
中等症
持続型
重症
持続型
軽症持続型
・咳嗽、軽度喘鳴が1回/月以上、
 1回/週未満
時に呼吸困難を伴うが、症状は短
 く、日常成果が障害されることは
 少ない。
軽症
持続型
中等症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
中等症持続型
・咳嗽、軽度喘鳴が1回/週以上、
 毎日は持続しない。
・時に中・大発作となり日常生活や
 睡眠が障害されることがある。

中等症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
最重症
持続型
重症持続型
・咳嗽、喘鳴が毎日持続する。
・週に1〜2回、中・大発作となり日
 常生活や睡眠が障害される。


重症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
最重症
持続型


長期管理における薬物療法の開始

少な目の薬剤で開始して良好なコントロールが得られるまで徐々に薬物の増量を図るよりも、早期に十分な効果が得られたのちに良好な状態を維持できる必要最少量まで徐々に減量するほすが、患児の生活の質(QOL)の向上のためには好ましいと考えられる。


小児気管支喘息の長期管理に関する薬物療法プラン (6歳〜15歳)

治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4



発作の強度に応じた薬物療法 吸入ステロイド薬
(低用量)
*2
and/or
あるいは
・ ロイコトリエン
 受容体拮抗薬*1
 and/or

・DSCG
吸入ステロイド薬
(中用量)*2
吸入ステロイド薬
(高用量)*2

以下の使用も可

・ ロイコトリエン受容
 体拮抗薬
*1
テオフィリン徐放製
 剤

・DSCG
・長時間作用性β2
  激薬の併用あるい
  はSFCへの変更



・ ロイコトリエン
 受容体拮抗薬*1
 and/or

・DSCG*1
テオフィリン
 徐放製剤
(考慮)
ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
テオフィリン徐放製剤
長時間作用性β2刺激薬の追加あるいは
SFCへの変更
以下を考慮
・ 吸入ステロイド薬の
  さらなる増量あるい
  は高用量SFC

・ 経口ステロイド薬
     DSCG:クロモグリク酸ナトリウム
     SFC:サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル配合剤
*1 その他の小児喘息に適応のある抗アレルギー薬(Th2サイトカイン阻害薬など)
*2 各吸入ステロイド薬の用量対比表(単位はμg/日)
低用量 中用量 高用量
FP、BDP、CIC 〜100 〜200 〜400
BUD 〜200 〜400 〜800
BIS 〜250 〜500 〜1000
FP:フルチカゾン
BDP:ベクロメタゾン
CIC:シクレソニド
BUD:ブデソニド
BIS:ブデソニド吸入懸濁液
FP(フルタイド)、BDP(キュバール)は添付文書に小児の1日最大用量は200
  μgを限度とすると記載されていますが、BUD(パルミコート)は小児の1日最大
  用量は800μgまでと記載されいます。なお、CIC(オルベスコ)には小児の1日
  最大用量の記載はありません。

@
長時間作用性β2刺激薬は症状がコントロールされたら中止するのを基本とする。
A SFCへの変更に際してはその他の長時間作用性β2刺激薬は中止する。SFCと吸入ステロイド薬の併用は可能であるが、吸入ステロイド薬の総量は各ステップの吸入ステロイド薬の指定範囲内とする。
B 治療ステップ3の治療でコントロール困難な場合は小児の喘息治療に精通した医師の下での治療が望ましい。
C 治療ステップ4の追加治療として、さらせ高用量の吸入ステロイド薬やSFC、経口ステロイド薬の隔日投与、長期入院療法などが考慮されるが、小児の喘息治療に精通した医師の指導管理がより必要である。


小児気管支喘息の長期管理に関する薬物療法プラン (2歳〜5歳)

治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4



発作の強度に応じた薬物療法 ・ ロイコトリエン
 受容体拮抗薬*1
 and/or
・DSCG

 and/or
吸入ステロイド薬
  (低用量)*2
吸入ステロイド薬
  (中用量)*2
FP or BDP 100〜150μg/日、BIS 0.5mg/日)
吸入ステロイド薬
  (高用量)
*2

以下の併用も可
・ ロイコトリエン
 受容体拮抗薬*1
テオフィリン
 徐放製剤

・長時間作用性
 β2刺激薬の併用
 
あるいは SFC
  の変更




・ ロイコトリエン
 受容体拮抗薬*1
 and/or
・DSCG
ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
長時間作用性β2刺激薬の追加あるい
はSFCへの変更
テオフィリン徐放製剤
(考慮)
以下を考慮
・ 吸入ステロイド薬
 のさらなる増量あ
 るい
は高用量SF
 C

・ 経口ステロイド薬
    DSCG:クロモグリク酸ナトリウム
    SFC:サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル配合剤
*1 その他の小児喘息に適応のある抗アレルギー薬(Th2サイトカイン阻害薬など)
*2 各吸入ステロイド薬の用量対比表(単位はμg/日)
低用量 中用量 高用量
FP、BDP、CIC 〜100 〜200 〜400
BUD 〜200 〜400 〜800
BIS 〜250 〜500 〜1000
FP:フルチカゾン
BDP:ベクロメタゾン
CIC:シクレソニド
BUD:ブデソニド
BIS:ブデソニド吸入懸濁液
FP(フルタイド)、BDP(キュバール)は添付文書に小児の1日最大用量は200
  μgを限度とすると記載されていますが、BUD(パルミコート)は小児の1日最大
  用量は800μgまでと記載されいます。なお、CIC(オルベスコ)には小児の1日
  最大用量の記載はありません。

@ 長時間作用性β2刺激薬は症状がコントロールされたら中止するのを基本とする。長時間作用性β2刺激薬ドライパウダー定量吸入器(DPI)は自力吸入可能な5歳以上が適応となる。
A SFCへの変更に際してはその他の長時間作用性β2刺激薬は中止する。SFCと吸入ステロイド薬の併用は可能であるが、吸入ステロイド薬の総量は各ステップの吸入ステロイド薬の指定範囲内とする。SFCの適応は5歳以上である。
B 治療ステップ3の治療でコントロール困難な場合は小児の喘息治療に精通した医師の下での治療が望ましい。
C 治療ステップ4の追加治療として、さらせ高用量の吸入ステロイド薬やSFC、経口ステロイド薬の隔日投与、長期入院療法などが考慮されるが、小児の喘息治療に精通した医師の指導管理がより必要である。


小児気管支喘息の長期管理に関する薬物療法プラン (2歳未満)

治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4



発作の強度に応じた薬物療法 ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
 and/or
DSCG

吸入ステロイド薬
  (中用量)*2
吸入ステロイド薬
  (高用量)*2
以下の併用も可
ロイコトリエン受容体拮抗薬*1



ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
 and/or
DSCG吸入
吸入ステロイド薬
  (低用量)
*2
ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
長時間作用性β2刺激薬(貼付薬あるいは経口薬)
長時間作用性β2刺激薬(貼付薬あるいは経口薬)
テオフィリン
 徐放製剤
(考慮)
 (血中濃度
  5〜10μg/ml)

    DSCG:クロモグリク酸ナトリウム
*1 その他の小児喘息に適応のある抗アレルギー薬(Th2サイトカイン阻害薬など)
*2 各吸入ステロイド薬の用量対比表(単位はμg/日)
低用量 中用量 高用量
FP、BDP、CIC 〜100 〜200 〜400
BIS 〜250 〜500 〜1000
FP:フルチカゾン
BDP:ベクロメタゾン
CIC:シクレソニド
BIS:ブデソニド吸入懸濁液
FP(フルタイド)、BDP(キュバール)は添付文書に小児の1日最大用量は200
  μgを限度とすると記載されていますが、CIC(オルベスコ)には小児の1日最大
  用量の記載はありません。


@ 長時間作用性β2刺激薬は症状がコントロールされたら中止するのを基本とする。経口薬は、12時間持続する1日2回投与の薬剤とする。
A テオフィリン徐放製剤は6ヶ月未満の児に原則として対象にならない。適応を慎重に市、痙攣性疾患のある児には原則として推奨されない。発熱時には一時減量あるいは中止するかどうかあらかじめ指導しておくことが望ましい。
B 治療ステップ3以上の治療は小児の喘息治療に精通した医師の指導・管理のもとで行うのが望ましい。
C 治療ステップ4の治療は、吸入ステロイド薬が高用量であるため、十分な注意が必要であり、小児の喘息治療に精通した医師の指導・管理のもと行う。





まだまだ一般に認知されていない吸入ステロイド薬
私は喘息ではない患者さんにも、最近の喘息治療では吸入ステロイド薬が第一選択薬になっているということをお話しますが、ほぼすべての人が「えっ!そうなんですか?」と驚かれるとともに、「それって副作用があるんじゃないですか?」という表情をされます。
このように、吸入ステロイド薬がいかに一般の人に認知されていないかを感じざるを得ない日々が今も続いています。
この原因には色々ありますが、一番大きいのは、
ほとんどの人がステロイドは副作用が怖いと思っていることと、吸入ステロイド薬の説明不足(医師から患者さんへの)だと思っています。
わが国では、医師を含めてほとんどの人が「ずっとステロイドは怖い!」という認識があります。また、
1983年以降、わが国では海外でまったく使われていなかった抗アレルギー薬(抗アレルギー薬はわが国だけで使われている名前で、世界的に抗アレルギー薬という薬はありません)を中心に喘息治療が展開されてきたわけです。そんなところへ突然のように、わが国ではまったく使われていなかった吸入ステロイド薬が、喘息治療の中心であることが世界的に発表されたのです。
喘息専門医を含め、わが国の医師が戸惑わないはずがありません。まったく使ったことのない薬が、突然、
1992年から喘息治療の中心ということになったのですから。
医師自身
「副作用は大丈夫なのか?」という思いがあり、吸入ステロイド薬を使用することにかなりの抵抗、躊躇ががあったようです。しかも、国民の多くが常識的に「ステロイドは怖い!」という認識を持っていますから、使う場合も説明しにくい面があったわけです。
現在、喘息治療に吸入ステロイド薬を使うようになったことをほぼすべての医師が知るようになりましたが、吸入ステロイド薬が第一選択薬であるという強い認識は薄く、また、ステロイドと言うことで「患者さんに説明にしくい」、「納得してもらいにくい」と言うことで、まだまだ普及が遅れいるわけです。
約10年経過した今、成人も小児も、ごく一部の喘息を除き、吸入ステロイド薬が第一選択薬として位置づけられるようになりましたが、まだまだ普及していないばかりか、広く国民に認知されていないことを、私は非常に残念に思っています。



アンダートリートメントとオーバートリートメント
喘息の治療は過少でもなく、過剰でもない適切な治療が求められます。そして、適切な治療は患者さんの症状や重症度によってちがいますし、経過によって変化します。
治療薬の投与が不十分なために喘息がコントロールできていないことを
アンダートリートメント(過少治療)といいます。逆に、喘息が十分にコントロールされているのに必要以上の治療薬が投与されていることを私はオーバートリートメント(過剰治療)といっています。
最も問題になるのは、アンダートリートメントのために病状の悪い状態が続き、日常生活に支障を来たすことです。中には、アンダートリートメントのために喘息死に至るということもあり得ます。
たとえば、発作が頻発するなど日常生活に支障来たすような症状があるにも関わらず
吸入ステロイド薬を使用しない場合、重症発作時に全身性のステロイド薬を使わない場合、吸入ステロイド薬でコントロール不十分なのに気管支拡張薬を使わない場合はアンダートリートメントということになります。
アンダートリートメントにならないための基本は、
吸入ステロイド薬を適切に使用することだと思います。そして、その吸入ステロイド薬もかなり普及するようになり、アンダートリートメントはかなり少なくなっているように思います。
むしろ、
問題なのはオーバートリートメントの方なのではと私は思っています。多剤を併用して治療する傾向のあるわが国ではオーバートリートメントになっていることがかなり多いのではいないかと思っています。
わが国の喘息治療は、以前は抗アレルギー薬と気管支拡張剤で治療するというのが基本でした。
そこへ、途中から吸入ステロイド薬が登場し、吸入ステロイド薬が加わった形になりました。そのため、抗アレルギー薬+気管支拡張薬がベースで必要に応じて吸入ステロイド薬というような形になっている感が、まだかなりあります。私は吸入ステロイド薬がベースで、必要に応じて気管支拡張薬または抗アレルギー薬というのが基本だと思っています。
軽症であるにもかかわらす、吸入ステロイド薬、テオフィリン徐放性製剤、β2刺激薬(経口または貼付)そしてロイコトリエン拮抗薬、去痰剤・・・と多くの薬剤を服用されている場合があります(これはガイドラインでは重症の治療となります)。また、経過が良好であれば治療のステップダウンが考慮されなければなりませんが、そのまま多くの薬剤を服用し続けている場合があります。これらは、典型的なオーバートリートメントだと思います。
治療は常に患者さんの病状を見ながらステップダウン、ステップアップされるべきであると思います。
私の場合、
経過が極めて良好であれば併用している薬剤を極力減らすようにしております。例えば、軽症の患者さんにおいて治療開始時に吸入ステロイド薬にテオフィリン徐放性製剤を併用したとします。経過が良ければ1〜2週でテオフィリン徐放性製剤は中止しています。そのようにしても、患者さんの経過が極めて良好というケースがほとんどです。ちなみに、当院に通院中の患者さんで吸入ステロイド薬を使用している患者さんの約4割りは吸入ステロイド薬しか使っていません
中等症でも併用する薬剤は1〜2剤までにするようにしています。もちろん、経過が良好であれば併用薬を慎重に中止しております。結局、長年にわたって喘息治療を行ってきて私自身がわかったのは、
「多くの薬剤を併用すれば良いというものではない!」ということでした。したがって、効果が出ていないと思った薬は中止するようにしています。
患者さんの負担、副作用、医療経済を考えると、むやみに多剤を併用することは慎むべきだと私は思います。
治療は必要最小限で効率的に行うことが大切なのではないでしょうか!
「シンプルで効率的な治療」
はずっと私の目標でもあります。



ガイドラインの普及はまだまだ!
1993年にわが国では喘息予防管理ガイドラインが発表されました。したがって、ガイドラインが出来て18年が過ぎたわけですが、まだ十分普及していないというのが現況です。専門医の先生は良くご存じなのですが、非専門医の先生においてはまだまだという感じがします。
ガイドラインに沿って吸入ステロイド薬を中心とした治療を行えば、多くの患者さんはコントロールできるようになったのですが、まだ、ガイドラインの存在は知っていても内容は知らないという先生が一部にあります。この背景には、かつてわが国では抗アレルギー薬と気管支拡張薬を中心に治療を行ってきたことがあると思います。
その観念がいまだに残っているために、吸入ステロイド薬を中心とした治療がなかなか普及しないのが現状です。ここ何年か、以前に比較して吸入ステロイド薬の使用は明らかに多くなり、改善されていますが、それでもまだまだという感じです。いまだに、吸入ステロイド薬を使うことに躊躇する先生も一部にはあります。こんな状況ですから、患者さんでガイドラインを知っておられる方はごく一部です。
残念ながら、先進国で日本の喘息治療は一番遅れているのではないかといわれています。喘息死亡率も先進国では多い国とされています。こうした現状をとても残念に思っていますが、患者さんのためにもガイドラインや吸入ステロイド薬の使い方を熟知して治療を行っていただければと心から願うばかりです。(2011.11.5)



ホーム はじめに 診療案内 リンク
ホームページ記載の文章、画像を無断で複製することを禁じます。